日本の火力発電依存度は約7割
石炭火力をめぐる世界の最新状況はどうなっているのでしょうか。
脱石炭連盟の分析やGlobal Energy Monitor社の資料などによると、昨年2024年は石炭火力にとって節目の1年でした。世界で新しく稼働した石炭火力の出力総計は44GW(ギガワット)で、過去20年間で最少記録となったのです。減少が目立ったのはEUで、廃止出力は11GW。前年に比べ廃止出力は4倍になりました。
中国とインドを除く地域では、建設計画中の総出力が10年連続で減少。2024年に新たな石炭火力を計画した国はわずか8カ国に留まっています。2023年以降の合計では、新規計画を持っている国は12カ国しかありません。とくに際立つのはOECD加盟国で、石炭火力の新設計画は2015年の142件から5件へと激減しました。
一方、2024年は別の節目を記録した年にもなりました。
経済発展を続ける中国とインドの動向です。両国は温暖化防止に消極姿勢を示すことで知られていますが、中国では2024年の火力発電所の新規建設が94GWに達し、2015年以来最多となりました。習近平国家主席は「2025年までに石炭消費の増加を厳格に抑制する」と国際社会に宣言していますが、この目標は反故にされそうな状況です。
同様に、インドでも石炭火力の新規計画は過去最多の38GWに達しました。2024年の新規計画は世界で116GWですが、この9割を中国とインドが占めているのです。
最後に日本の状況を見ておきましょう。経済産業省・資源エネルギー庁のデータによると、2023年度の電源構成は、火力69%(内訳:石炭28%、石油等7%、天然ガス33%)。次いで、水力や太陽光などの再生可能エネルギーが23%、原子力9%となっています。国のエネルギー基本計画では、2040年度の見通しとして原子力の比率を「2割程度」に増やす一方、火力の比率を「3〜4割程度」に落とすとしています。
ただし、火力の比率を減らすと言っても内訳は公表されていません。G7で唯一、脱石炭連盟に加盟していない日本は、「石炭火力ゼロ」を現実目標としないまま、2040年を迎えることになりそうです。
フロントラインプレス
「誰も知らない世界を 誰もが知る世界に」を掲げる取材記者グループ(代表=高田昌幸・東京都市大学メディア情報学部教授)。2019年に合同会社を設立し、正式に発足。調査報道や手触り感のあるルポを軸に、新しいかたちでニュースを世に送り出す。取材記者や写真家、研究者ら約30人が参加。調査報道については主に「スローニュース」で、ルポや深掘り記事は主に「Yahoo!ニュース オリジナル特集」で発表。その他、東洋経済オンラインなど国内主要メディアでも記事を発表している。