(写真:Inside Creative House/shutterstock)
老化を遅らせる物質として注目を集めている「NMN(ニコチンアミド・モノヌクレオチド)」。NMNが働く背景には、脳の視床下部と脂肪細胞が連携して生み出す連鎖反応がある。この循環が維持されれば老化の進行は遅れ、反応が弱まれば老化が加速することがわかってきた。細胞レベルでの研究が進む最新の老化のメカニズムに迫る。(JBpress編集部)
(吉森 保、生命科学者/大阪大学名誉教授)
※本稿は『私たちは意外に近いうちに老いなくなる』(吉森 保著、日経BP)より一部抜粋・再編集しました。同書のNMNについてのパートは、著者の吉森保名誉教授がワシントン大学今井眞一郎卓越教授に取材して執筆したものです。
前編「老化を遅らせる夢の物質「NMN」と「サーチュイン」とは?老化を防ぐメカニズムはここまで明らかになった」から続く
寿命をのばす酵素「サーチュイン」が働くために必要な「NAD」
前編で解説したサーチュイン(老化を遅らせて寿命そのものをのばす働きがあるとされる酵素)が働くには条件があります。
サーチュインは単独では活動できないのです。
NAD(ニコチンアミド・アデニン・ジヌクレオチド)という物質を使うことで初めて活性化します(NADは他の酵素の働きを助けるので補酵素と呼ばれています)。
このNADが、いうなれば老化や長寿に直接かかわる酵素サーチュインの活性化のカギを握っているとも言えます。
ただ、NADは加齢によって減少してしまいます。
サーチュインは年齢を重ねるほど働く必要があるはずです。
ただ、必要な場面が増えても、NADが加齢により減るのでサーチュインがうまく活性化できなくなります。
「そこまでわかったなら、NADが減ったら、人工的に増やせばいいのでは」とみなさんは思ったはずです。その通りです。
このNADを増やす効果があるのが、NMN(ニコチンアミド・モノヌクレオチド)なのです。
NMNを摂取するとすばやく体の中に取り込まれてNADに変換され、サーチュインがそのNADを使って働きます。
NMNを効率的に摂取する方法は?
NMNはサプリのイメージが強いかもしれませんが、アボカド、ブロッコリー、キャベツ、エビなどの食料にも含まれています。
ただ、微量なので、サプリ1カプセル分を食料から摂取するとなると、エビの場合、数千尾食べなければいけないので現実的ではありません。
そうなると、サプリでの摂取がいいでしょう。ただ、最近は多くの企業が商品を出していて値段も中身もピンキリです。
ある新聞社の調査では、不純物が入っていたり、NMNがほとんど検出されなかったりする商品もあるそうです。
また、一度に大量のサプリを摂取する人がいますが、人間の腸にはNMNが必要以上に吸収されないしくみがあるため、一定以上の量を摂取しても意味がありません。

