(写真:Vink Fan/Shutterstock)
老化を遅らせ、寿命をのばす可能性があるとして急速に注目を集めている物質「NMN(ニコチンアミド・モノヌクレオチド)」。その効果はテレビやSNSでも注目され、国内市場は100億円規模にまで成長しているが、一方で安全性やその効果を疑う声もある。NMNの正体とメカニズム、さらにその鍵となる酵素サーチュインの働きから、老化研究の最前線を紹介する。(JBpress編集部)
(吉森保、生命科学者/大阪大学名誉教授)
※本稿は『私たちは意外に近いうちに老いなくなる』(吉森 保著、日経BP)より一部抜粋・再編集しました。同書のNMNについてのパートは、著者の吉森保名誉教授がワシントン大学今井眞一郎卓越教授に取材して執筆したものです。
老化を遅らせる夢の物質「NMN」とは?
NMN(ニコチンアミド・モノヌクレオチド)を聞いたことはありますか?
老化を遅らせ、寿命をのばす効果が期待される物質で、NMNを使ったサプリメントはSNSのインフルエンサーやテレビなどでも取り上げられ、過熱気味のブームになっています。
国内には数年前まで市場すらなかったのですが、今の市場規模は100億円を超えているとの見方もあります。
ただ、もしかすると、みなさんの中にはNMNを怪しいと感じる人もいるかもしれません。
突然出てきてもてはやされ、「本当に効くの?」「体に悪くないの?」と怪しさを感じている人もいるでしょう。
のちほど説明しますが、その「怪しさ」を一部のNMN商品に感じるのは正解です。
自分で正しく新しい科学的な情報を判断するためには、NMNがそもそも何なのか一体の中でどのような働きをしているかを知ることが必要です。
なぜNMNには老化による組織や臓器の機能低下を抑える作用があるのか、そのメカニズムを知れば、「老化をいかに防ぐかは、ここまで明らかになっているのか!」ときっと驚くはずです。
さきほど、NMNとは、老化を遅らせ、寿命をのばす効果が期待される物質だと言いました。
こんな夢のような物質を発見したのは、ワシントン大学卓越教授の今井眞一郎さんです。この話は、今井先生への取材にもとづいています。
糖尿病のマウスにNMNを飲ませたところ、血糖のコントロールがほぼ正常になり、膵臓の機能も回復するなど症状が劇的に改善されました。
今井先生の健康に年をとっているマウスを使った実験でも代謝が上がったり、免疫細胞の数が増えたり、NMNのいくつもの老化を遅らせる効果がわかっています。

