寿命をのばす働きをもつ酵素「サーチュイン」
この考えは当時、あまり注目されませんでしたが、現代の生命科学では常識になりつつあります。ちょっと早すぎた研究でした。
研究の世界には、後世からみるとすごいけれど、時代が早すぎてあまり評価されないケースがよくあります。研究の世界もビジネスの世界と同じです。
その後、今井先生はアメリカに渡って1999年に、老化を遅らせて寿命そのものをのばす働きがあるとされる酵素「サーチュイン」 を共同研究で発見します。
サーチュインは、最初、酵母から発見されました。その遺伝子を破壊すると、酵母の寿命が短くなったのです。
その後哺乳類では7種類あることがわかりました。
これらの酵素は、細胞のエネルギー産生を助けたり、紫外線や化学物質などの影響で損傷したDNAを修復したり、さまざまなストレスから細胞を守ったりします。それぞれの働きが、老化を防いでいることが確かめられています。
サーチュイン遺伝子からつくられるのが、酵素としての「サーチュイン」です。詳しくは、脱アセチル化酵素と呼ばれています。
脱アセチル化とは、DNAが乗っているひも状の二重らせんが巻きついているヒストンなどのたんぱく質から、サーチュインが「アセチル基」を外すことです。
老化するということは、DNAが余計なたんぱく質をつくってしまうことです。
サーチュインのしくみ(書籍より)
ちょっと専門的になってしまいましたが、このヒストンの脱アセチル化が、老化につながる余計なたんぱく質をつくるのを防ぎます。
サーチュインがアセチル基を外すということは、つまり、サーチュインがDNAの情報に余計なことをさせずに、現状を維持する役割を担っているということです。
現状を維持するということは、老化を遅らせることにつながります。
今井先生の「本来読み取られてはいけないDNA情報が読み取られてしまうのが老化の原因ではないか」という仮説は正しかったわけです。
後編「寿命をのばす酵素サーチュインの活性化を支える「NMN」、ただし摂取方法は要注意」へ続く



