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「オートファジー」とは、細胞を「自分の力で新品にする機能」のこと。最近の研究で、さまざまな病気から細胞を守る守護者であることがわかってきた。オートファジーは、がんやアルツハイマー病、パーキンソン病、脂肪肝や心不全などいろいろな病気を治せるのではとの期待が高まっている。オートファジーが秘める可能性を、著名なオートファジー研究者である吉森保教授が解説する。

 後編では、オートファジーがアルツハイマー病にもパーキンソン病の治療に貢献できる可能性を探求する。(JBpress)

(※)本稿は『LIFE SCIENCE 長生きせざるをえない時代の生命科学講義』(吉森保著、日経BP)より一部抜粋・再編集したものです。

脳の病気を治す切り札になるか?

 オートファジーは、「細胞の中の物を回収して、分解してリサイクルする現象」のことです。

 オートファジーには、大きく3つ役割があります。
①飢餓状態になったときに、細胞の中身をオートファジーで分解して栄養源にする
②細胞の新陳代謝を行う
③細胞内の有害物を除去する

 ③細胞内の有害物を除去する、の“有害物”のうち、病原体(とくにウイルス)をどのように除去するかについては、前編「侵入したウイルスを撃退!細胞のふしぎな能力」(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/63418)で説明しました。

 そのほかオートファジーが標的とする有害物としては、壊れたオルガネラ*1やタンパク質の塊があります。

*1 オルガネラ(細胞小器官)は、細胞の中にある臓器のようなもので、ミトコンドリア、リソソームなどがある。ミトコンドリアが壊れると活性酸素が、リソソームが壊れると消化酵素が、細胞内に漏れてしまい、細胞に悪影響を与える。

 最近注目されているのがタンパク質の塊の除去です。これは非常に重要な発見です。治療法がなかなか見つからない病気と深い関係があるからです。タンパク質の塊によって引き起こされる有名な病気が神経変性疾患です。

 アルツハイマー病やパーキンソン病などの神経変性疾患は、脳細胞の中にタンパク質の塊ができて、その塊のせいで細胞が死ぬことで起こります。そのタンパク質の塊をオートファジーは狙い撃ちで除去します。

 オートファジーは脳の病気を治療する切り札になるかもしれないと今、期待が膨らんでいます。