老化とは、現在の体の状態が弱まり、機能を保てなくなること
老化とは何か。一般的には、老化は病気にかかりやすくなることとお伝えしてきました。
今井先生は少し哲学的で、ロバストネス(頑強性)の減少と崩壊と定義しています。
ロバストネスとは工学用語で、ある状態を一定のところに保つ力です。
先生は、加齢にともなって、体の状態が弱まり、機能を保てなくなるのを老化と捉えています。
たとえば、甘いものを食べる(外界からの刺激)と、血糖値が上がります。膵臓の細胞は、それに反応してインシュリンを出します。そのおかげで血糖値は下がります。
ただ、加齢に伴って、組織や臓器の状態が徐々に衰えます。反応が悪くなり、インシュリンがあまり出なくなり、血糖値が元まで下がらなくなります。
この反応の悪さが老化だということです。
血糖値の絶対値だけではなく、加齢による反応の程度が縮小することです。そして、完全に反応できなくなったときに人間は死ぬわけです。
今井先生は、何らかの問題が生じるから「反応が悪くなる」ようになるシステムがあることで老化が進んでいくのではないかと考えています。
そのひとつが視床下部の神経細胞と脂肪組織の関係で、こうした老化を抑えるシステムがいくつもあるのではというのが今井先生の仮説です。
今井先生の研究からも老化は決して抗えないものではないことがわかったはずです。
もちろん、NMNにより最大寿命がのびるかはマウスの実験でもまだわかっていません。NADを増やしても若返ったり、老いなかったりは難しいかもしれません。
ただ、研究の成果を活用すれば、人間の臓器や組織の活力を維持して老化のスイッチが入るのを遅らせる可能性は見えてきています。
不老不死は実現できなくても、年を重ねても老化を遅らせ、実年齢よりも身体機能を若く保ち、健康寿命をのばすことは決して夢物語ではない時代がそこまできているのです。



