モデルルームに殺到していたのは誰か?
東南アジアなどでは、新築マンション住戸の購入権をまだ建設されていない段階から転売する人が多いのは知っていたが、まさか日本でもこうした「転売ヤー」が横行しているのは驚き以外の何ものでもない。
都内好立地の新築マンション現場ではまさに、一攫千金を夢見る転売ヤーが跋扈(ばっこ)し、何としてでも抽選をかいくぐって、宝を得ようとしているのである。モデルルームが抽選になる理由には、本当に自らの住居として買いたいのではない、純粋に投資転売を目論む人たちで大混雑しているというわけだ。
こうした実態は、マンションが本来持っている「住宅」という機能、役割というよりも完全な投資商品になっていて、本当に住宅が欲しい人の邪魔をしているとの声が上がり始めている。対策に乗り出したのが自治体、大手マンションデベロッパー、そして国の税制調査会である。
まず声を上げたのが神戸市だ。
市内に建つタワーマンションについて、空室のまま放置されている住戸に対して戸別に課税をしようというものだ。まだ専門家委員会の答申レベルの話だが、タワマンの空室に課税する空室税として話題を呼んだ。
神戸市内のタワーマンション(写真:共同通信社)
同じく千代田区は大手デベロッパーなどが加入している不動産協会に対して、区内で販売される新築マンションに関して、5年間の転売禁止および買い手1者が申し込める住戸を2戸までに制限することなどを要望した。
さらに、マンション分譲大手の三井不動産レジデンシャルは中央区月島で分譲しているタワマンの契約者に対して、物件引き渡し日までの転売行為が発覚した場合には、違約として契約を解除すると通告。買い手が契約時に支払う手付金(販売価格の10%程度)を没収することを発表した。10%といっても価格が2億円なら2000万円とかなりの高額になる。
住友不動産は豊島区池袋で分譲された再開発タワマン2棟について5年間の転売禁止という特約を付し、違反した場合には物件価格の2倍の違約金を取るとした。
また、政府税制調査会の会合では、不動産小口化商品や一棟ものの賃貸不動産(アパート、マンションなど)への投資が相続評価額の圧縮(相続税の節税)につながっているとして、タワマン規制に続き、相続税評価にあたっての手法について課題に挙げているとの報道があった。
世間の声に対して一定の理解を示し、国や自治体、大手デベロッパーなどが対策案を示した形だが、空室税や転売規制、申込戸数制限などの対策はどこまで実効性があるかは疑問である。