②「ドル箱」契約を法廷戦略で死守

 クック氏がこの夏に回避したもう一つの危機が、米グーグルとの検索エンジン契約を巡る司法リスクだ。

 今夏、グーグルに対する反トラスト法(独占禁止法)裁判は、是正措置を決定する段階に入っていた。

 この裁判で裁判官は、アップルが「Safari」ブラウザーのデフォルト検索エンジンとしてグーグルを採用する見返りに受け取っている支払いを差し止める権限を持っていた。

 この契約は、アップルに年間200億ドル(約3兆円)以上の収益をもたらし、その大半が利益になる「ドル箱」だ。

 アナリストによれば、同社の営業利益の約5分の1を占めると推定され、これが失われれば業績への打撃は計り知れない。

 アップルは、クック氏の側近であるエディ・キュー上級副社長を証言台に立たせた。

 米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)によれば、キュー氏は、AIの台頭によって市場の競争力学は既に変化していると強調。

「裁判官が厳しい措置を課さずとも、市場が自ら解決する」という論理を展開し、契約差し止めはアップル自体にも害を及ぼすと訴えた。

 結果として、裁判官はグーグルに軽い是正措置を課すにとどめ、問題の契約は維持された。

 あるアナリストが「ミサイルをかわした」と評したように、アップルは最大の経営リスクの一つを法廷戦略で切り抜けた。