③「最高であれ」、AIより実利を優先

 ライバル企業が巨額の投資を続けるAI分野で、アップルは「華々しい先進性がない」との批判にさらされてきた。

 しかし、クック氏のモットーは「最初であることより、最高であること(be best, not first)」だ。

 AIブームに踊らされることなく、むしろ堅実な経営に徹した。

 9月に発売したiPhone 17は、一部モデルの人気が低迷したものの、ラインアップ全体で十分な新機能を提供し、多くの顧客のアップグレード需要を喚起した。

 10月末の決算発表では、年末商戦を含む10〜12月期の売上高が市場予想の2倍となる最大12%の成長を見込むと明らかにした。

 こうした堅実な製品戦略に加え、年間1000億ドル(約15兆円)規模の自社株買いが株価を下支えし、アプリやサブスクリプション(定額課金)で構成されるサービス部門の年間売上高も初めて1000億ドルを超えた。

 前任者の故スティーブ・ジョブズ氏が「製品の人間(product guy)」と評されたのに対し、クック氏は「オペレーション(業務)の人間」と評されてきた。

 その真骨頂は、政治、法律、財務、そしてサプライチェーンのすべてを駆使し、巨大企業の経営リスクを巧みに回避し、確実に利益を積み上げる経営術にある。

 AI時代における真の革新や、クック氏自身の後継者問題など、アップルが抱える課題は依然として大きい。

 しかし、2025年の危機を乗り越えた同社の軌跡は、クック体制の強靱さ(レジリエンス)を改めて市場に示す結果となった。

 (参考・関連記事)「巨大テック決算、AI投資と既存事業の両輪 年末商戦へ強気の見通し | JBpress (ジェイビープレス)

 (参考・関連記事)「アップル、対米投資1000億ドル上積み 関税免除の「交換条件」か - 製造業国内回帰の実態と課題を探る | JBpress (ジェイビープレス)