アドトラックの例=2024年撮影(写真:Ned Snowman/Shutterstock.com)
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荷台部分にはカラフルなイラスト、きらびやかなネオンも飾られ、スピーカーからは大音声……。都会の街角をそんな派手なトラックが走り回っています。トラック全体を広告目的に改造した「アドトラック(広告宣伝車)」です。抜群の広告効果があるとされる一方、大音声や広告の内容に眉をひそめる人も少なくありません。その広告車両を規制しようという動きが各地で強まっています。規制の背景や業界の改革に向けた動きなどをやさしく解説します。

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福岡市の調査では97%が風俗関連

「市民の皆さんからも苦情を聞きます。ああいう(広告で)風俗のほうに引き寄せるようなものが街中を堂々と走っている。これまで市民の皆さんと一緒に、福岡市の景観をつくってきたんですが、想定していなかった状況になっている」

 こう語ったのは、福岡市長の高島宗一郎氏です。ことし10月の記者会見で、アドトラック対策に関する質問を受けてのことでした。高島氏は「悔しいけど、(自分も)音(楽)を覚え、子どもが口ずさんでいる」状況もあると語り、表現の自由に配慮しつつも規制が必要との考えを強調しました。

 派手な電飾を施し、大きな音を出しながら繁華街を走り回るアドトラックは最近、福岡市でも大問題となっていました。市がことし4〜7月、博多駅や天神など繁華街6カ所で調査したところ、計64時間で延べ202台のアドトラックが確認されました。およそ20分に1台の割合で走行していたことになります。しかも、このうち196台、実に97%が風俗関連の広告車両でした。

 福岡市の屋外広告物条例ではアドトラックの発光・点滅を禁じており、業者には市への登録や許可申請を義務付けています。ところが、条例が対象とするのは福岡市内に本拠を置く車両だけで、市外からやってくる車両は規制の対象外でした。実際は、福岡で走り回っているアドトラックのほとんどは千葉県や埼玉県など県外ナンバーだったことが市の調査で判明しています。

 こうしたことから福岡市は同条例を改正し、拠点がどこであろうと、市内を走る車両のすべてを規制対象としたい考えです。無許可走行や禁止された広告を繰り返し掲示するなどした場合は、拘禁刑や罰金の刑事罰を科す方向。福岡市は本年度内に条例改正案を市議会へ提出し、来年10月の施行を目指しています。

 条例による同様の規制は、東京都も2024年6月から実施しています。条例改正で、都外ナンバーの車両を規制対象としたほか、発光・点滅するLEDビジョンなどを使用禁止に。デザインについても、業界団体の自主検査を事前に受けてパスすることが必須となりました。このほか、名古屋市などでも規制を検討する動きが始まっています。