日本には独自に発展できる未来がある

 文化の未来は感性だけでなく、テクノロジーによって大きく形を変えるだろうという予感です。

 AIが舞台装置を支え、ITインフラが空間を制御し、その上で人間が物語る。その融合点には、今までになかった可能性が広がっています。

 振り返ると日本にも独自の未来があるような気がします。

 産業用のロボット技術や、高度な製造技術を使って、エンタテインメントの世界に進出するのもありだと思いました。

 日本の造船技術が、「飛鳥」などの豪華客船を作ったように、日本の技術を生かせる分野があると思います。

 精密な身体表現や細やかな演出を文化として磨き上げてきた日本が、AIと手を組んだとき、世界に対して新しい舞台美学を提示できるはずです。

 制約を逆手に取り、物理とデジタルを融合させた新しい魔法。それは日本だからこそ生まれる芸術かもしれません。

 75億円の舞台が示したのは、ファンタジーの力ではなく、文化、資本、そしてテクノロジーが結びついたときの未来でした。

 舞台芸術はこれからさらに進化します。そのカギを握るのは、AIと人間の協働です。

 私たちは今、その入口に立っているにすぎません。だからこそ、劇場を出たあとも私はこう思い続けているのです。

 次の魔法は、きっと日本の技術で共に生まれるだろうと。