日々更新される最新技術使った演出

　これは大雑把だからできるわけではありません。劇場を更新可能なデジタル空間として捉えているためで、観客が気づかないところで最新の制御システムが次々と組み込まれていきます。

　その結果、作品は技術と空間の両面から支えられ、75億円という投資が成立するのです。

　一方、日本の劇場は物理的制約が非常に多いのが現実でしょう。

　消防法、建築基準法、劇場の構造上の制限により、火、水、煙、重量物、急激な転換、可動床など、ブロードウェイでは日常的に行われる演出が日本では困難になります。

　もちろん安全性は最優先ですが、テクノロジー活用によって乗り越えられる領域もあるはずです。

　ここにこそ、日本の舞台文化が次のステージへ進む余地が残されています。実際、日本でもAIの導入は少しずつ進み始めています。

　照明プランをAIが補助して、光の当たり方を自動最適化する取り組み。舞台上の俳優の動きをセンシングし、演出の違和感を検出して稽古の効率を上げる仕組み。

　舞台装置の荷重や揺れをAIが監視し、危険を事前察知する実験が行われています。

　これは安全基準の厳しい日本においてこそ価値が高い技術で、AIが安全性を担保することで、逆に演出の幅を広げられる可能性すらあるのです。

　業界の裏側では、舞台セットや小道具の設計段階でデジタルシミュレーションが活用され始めています。

ギャラリーページへ