議員報酬が政治の質を左右する理由
多くの人にとって、政治家は「権力を持ち、発言力があり、手当にも恵まれている存在」というイメージがある。だが現実には、国会議員の懐事情は一般の想像よりはるかに厳しい。
元衆議院議員の宮崎謙介氏は、出演番組で「議員時代の手取りは月58万円だった」と明かし、その実態を語った*3。
*3:「手取り金額58 万円」宮崎謙介氏が議員時代の歳費の内訳を明かす SNSでは驚愕の反応
秘書給与の負担こそないものの、党への寄付や派閥費、地方組織への拠出で毎月20万円以上が天引きされ、さらに多数の議員連盟への会費も積み重なり、自由に使える額は大きく削られるという。地元行事や議員同士の会合にも私費負担が発生し、「一晩で2万〜3万円が飛ぶことも珍しくない」と述べた。
いさ進一前衆議院の解説によれば、旧文書通信交通滞在費(政治活動を支える領収書不要の経費として支給されていた月100万円の資金)を真面目に仕事に使っている場合、手取りは大体月20万円台後半から40万円台後半ということだ*4。これは驚きの数字である。
*4:【落選議員】国会議員の手取り金額がやばすぎたので、晒してみた。
いさ前議員も議員になってみて驚いたのではないだろうか。例えば、いさ前衆議院議員は東京大学工学部航空宇宙工学科の卒業のようだが、2012年に国会議員にならずに東大卒の学生に大人気の外資系コンサルに勤めていれば、今頃パートナーレベルになっていたと見積もって、月に額面で最低でも300万円もらっていた可能性もある。
そうした優秀な人材が、手取り40万〜50万円で国民のサンドバッグになるリスクを負いながら、政治家という仕事を選ぶだろうか。
これでは「職業としての政治」が魅力的な職業とは見られにくい。若者や女性の政治参加は伸び悩み、専門性の高い分野(医療、データ政策、科学技術、外交など)で活躍する優秀な人材は政治から距離を置く。結果として、政治家の平均年齢は上昇し、専門性不足が深刻化し、政策の質に直接跳ね返る。
この構造を放置してよいのか。
経済学の実証研究から、政治家の報酬が低い国・地域では、政治の質が落ち、汚職リスクが高まり、優秀な候補者が離れていく、ということがわかっている。
では、本当に報酬を上げるだけで政治が良くなるのか。
世界の研究は、この問いに対し、「因果関係」として答えを出している。