優秀な人材は、なぜ政治に来ないのか:給与は職業選択の前提条件
ブラジルの例では報酬増はより学歴の高い恵まれた育ちの議員立候補者数を増やした。イタリアでは、市長給与が高い自治体では、
• 学歴の高い候補者
• 専門職経験者
• 民間で高い能力を評価されていた人材
が市長に立候補しやすくなることが分かっている。
なぜか。
現代の優秀な人材は、民間企業で高い収入を得ることができる。特に理系の国際人材、データサイエンティスト、医療専門家、IT技術者など、専門技能を持つ人材は給与水準が高い。彼らが政治家になることは社会的には望ましいが、経済的には大きなリスクを伴う。
「政治に人生を賭ける価値があるかどうか」という判断に、報酬水準が大きく影響することは至って自然なことである。
イタリアとブラジルの実証研究は、政治家の質は給与に反応する、というエビデンスを提供している。
議員が「議会に出席する」ようになる:副業構造の改善
別のイタリア国会議員の分析では、外部収入が高い政治家は議会を欠席しがちであることが明らかになった。しかし、外部収入が高いことで議会を欠席しがちになるのか、議会を欠席しがちな不真面目な人が副業に精を出しているのか、どちらかわからない。興味深いのは、研究者がこの因果関係を示すために用いた工夫である。
議員の「市場価値」は当選前の所得を見れば分かる。しかしその所得は議会出席とは関係がない。これを手がかりにすると、外で稼げる人ほど議会に来ないのは「因果関係」であることが分かる。
この結果から、外で稼げる能力の高い人材に議員になってもらいたいと国民が考えるのであれば、外で稼げるレベルの収入と比べても遜色ない報酬を提示しなければ、給料が安すぎると感じて本業に専念しない、という構造が生まれてしまうことになる。だからこそ、政治家の報酬をあげて、兼業をある程度制限するという方向性がいいだろう。