11月14日、中国でも映画『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』が公開された(写真:VCG/アフロ)
(数土 直志:ジャーナリスト)
『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』が快進撃を続けている。公開からすでに4カ月となるが、国内興行収入は前作『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』の407億円に次ぎ、国内歴代第2位の379億円(11月16日現在)と記録破りだ。
興行収入1000億円超え
この鬼滅ブームが、海外でも大きな盛り上がりを見せている。9月12日に公開した北米では外国語映画歴代1位を打ち立て、日本映画では初となる2週末連続で興行ランキング1位となった。11月14日からは中国で公開し、こちらも初週末は2位以下を圧倒的に引き離す3.7億元(約80億円)と絶好調のスタートになった。
この結果『「鬼滅の刃」無限城編』 は、現時点で2025年公開映画では世界興行第5位との驚くべき記録となっている。2025年11月17日までの全世界興行は中国を含めて日本円でおよそ1200億円近くに達する(海外興行情報サイトの数字から独自集計、1ドル154円で計算) 。
『リロ&スティッチ』(実写)や『マインクラフト/ザ・ムービー』、『ジュラシック・ワールド/復活の大地』などが『鬼滅の刃』より上位にあるが、2025年に鳴り物入りで公開された『スーパーマン』やディズニー/マーベルのヒーロー映画を軽く上回る。もちろん歴代の日本映画では、過去最大の世界ヒットである。
日本アニメでは、これまでも『千と千尋の神隠し』『君たちはどう生きるか』などのスタジオジブリ作品や『君の名は。』などの新海誠作品が世界的にヒットしてきた。現象だけを見れば、『鬼滅の刃』のヒットも、こうした日本アニメの世界的な人気の延長に見える。
だが、今回の『「鬼滅の刃」無限城編』の成功は、日本の映画・アニメ業界にもっと大きなインパクトを与えている。さらにそれは世界の映画業界、言い換えれば米国ハリウッドを中心とした既存のビジネス構造さえも揺るがす可能性が出てきている。
少し大げさに言えば、世界の映画業界は「鬼滅以前」と「鬼滅以後」で分けられるようになるかもしれない。