「17歳以上」年齢引き上げがロシアにとって不利ではない理由
──ミラノ・コルティナ五輪から、出場年齢が「17歳以上」に引き上げられました。女子は16歳以下の金メダリストが数多くいるので、このルール変更は大きなものだと思います。主な理由は「若い選手の体と心を守るため」で、4回転を跳んで若いうちに競技から姿を消していくロシア女子の影響もあったと考えられますが、このルール変更をどう捉えていますか。
河西 女子選手がこれだけ4回転を跳ぶようになったのは最近のことで、短い間で急速に技術が進化したぶん、体への負担は大きかったと想像されます。選手生命の短命化を、組織や大人が推奨してはいけないと思うので、健全なルール改正だったのではないでしょうか。私がもともと、ジャンプというよりは「総合力」のフィギュアスケートが好きだということもあります。
──しかしこのルール変更によって、4回転とトリプルアクセルを跳ぶ島田麻央選手(17)は五輪に出られず、ジュニア時代が続いています。「五輪前年の7月1日時点で17歳以上」が条件となっており、10月生まれの島田選手は3カ月足りませんでした。同じくトリプルアクセルを跳ぶ17歳で4月生まれの中井亜美選手は出場可能で、期待を集めています。
今野 そうですね。日本人としては、ギリギリのタイミングで出られない島田麻央選手のことを思うと複雑な気持ちはあります。ただ、フィギュアスケートの将来を考えると、年齢引き上げはよかったと私も思っています。
2025年8月24日、フィギュア東京夏季大会・ジュニア女子フリーの演技を終え、歓声に応える島田麻央(写真:共同通信社)
──ザギトワ選手が金メダルをとったのも15歳ですし、若い選手が活躍してきたロシアにとっては、年齢引き上げは不利に働くと思いますか。
河西 それはないと思います。ルールの中で、他の国が考えもしないくらい結果に執着してくるのがロシアですから。