ランドセルの歴史、一時は「廃止論」も
ランドセルには古い歴史があります。
ランドセル工業会の「ランドセル130年史」(2016年刊)などによると、ランドセルの起源は、江戸時代にまでさかのぼります。幕末に主にオランダから輸入され、軍隊で活用されるようになった布製の背のう(オランダ語で「ransel=ランセル」)が始まりだったとされています。
これが現在とほぼ似たランドセルになったのは明治20(1887)年のこと。 大正天皇の学習院初等科への入学祝いとして、内閣総理大臣だった伊藤博文が献上した箱型の革製かばん「学習院型ランドセル」が原型となり、時を経て小学生の通学かばんとして日本中に定着しました。
子どもたちの通学かばんには国によって様々な種類がありますが、背負式の箱型革製かばんは日本独自のものとされています。
ただ、高価な革製が一気に拡大したわけではなさそうです。1929(昭和4)年2月13日の読売新聞記事『通学鞄すたれ、ランドセル全盛』によると、この頃からフェルトなど格安の布地でできたランドセルが急速に普及し、「7対3」だった肩掛けかばんとランドセルの割合が一気に逆転したようです。
ランドセルの歴史はすべてが順風満帆だったわけではありません。
敗戦直後の物資不足だった時代には、革製ではなく、ブリキ製のランドセルが製造されます。1960年代後半から1970年代にかけては各地で「廃止論」が高まりました。ランドセル自体の重さに加え、毎日教科書やノートを目一杯詰め込んで登下校するのは、小さな子どもには負担が大き過ぎるとの意見が広がったためです。
さらには、当時の物価高の中で、新規の購入は家計に厳しいとの声も根強く、実際に千葉県の市川市や船橋市、兵庫県西宮市などではランドセルの使用を認めない措置も取られました。
こうしたなか、ランドセルメーカーは不当な価格表示を禁じたり、製品の標準規格を定めたりして、業界の健全化を図っていきます。1994年にはランドセル工業会が「変形ランドセルの生産・販売の自粛」など4項目の申し合わせに合意し、現在に至る販売・流通の形が整いました。