2025年10月20~23日に中国共産党が開催した四中全会(第20期中央委員会第4回全体会議)(写真:新華社/アフロ)
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(川島 博之:ベトナム・ビングループ Martial Research & Management 主席経済顧問、元東京大学大学院農学生命科学研究科准教授)

 中国の駐大阪総領事が「(高市首相の)汚い首は斬ってやる」とX(旧ツイッター)に投稿したことは日本側の強い反発を招いた。中国側が陳謝するかと思いきや、売り言葉に買い言葉が繰り返されて、中国政府が国民に日本への渡航を自粛するように呼びかける事態にまで発展した。

 この自粛要請は福島の水産物が危険と煽って日本からの水産物の輸入を禁じたように、今後両国の外交問題として長く尾を引く。騒がしい観光客が減って良いとする意見がある一方で、中国からの観光客がいなくなれば観光業は大きな打撃を受ける。

 中国は観光客を人質にとって日本に揺さぶりをかけている。中国の対応は国民の不満を外国との緊張を強めることによって外にそらそうとする政策の典型である。

韓国・慶州における第32回アジア太平洋経済協力(APEC)首脳会議の際に会談した日本の高市早苗首相と中国の習近平国家主席(資料写真、2025年10月31日、写真:新華社/アフロ)

改革が必要な中国の現状

 中国共産党が2025年10月20~23日に開いた四中全会(第20期中央委員会第4回全体会議)において、目立った発表はなかった。そして目立った発表がなかったことから、中国人は自分たちが容易ならざる事態に直面していることを悟った。

 今回の四中全会は開催時期が遅れていたことから、党内の権力闘争の激化がささやかれており、習近平の辞任や胡春華が政治局員に返り咲く可能性などが噂されていた。だが終わってみれば大きな変化はなかった。共産党の中で暗闘があったことは確かであるが、習近平はその暗闘に勝利した。