米国による制裁でロシアの石油産業は大打撃を受けている。写真はロシアのプーチン大統領(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)
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(藤 和彦:経済産業研究所コンサルティング・フェロー)

 米WTI原油先物価格(原油価格)は今週に入り1バレル=58ドルから61ドルの間で推移している。週半ばに61ドル台に上昇したが、石油輸出国機構(OPEC)の月報が発表されると58ドル台に急落した。

 まず原油市場の需給を巡る動きを確認しておきたい。

今週の原油市場の動向

 OPECは11月12日に発表した月報で「世界の原油市場は来年(2026年)、小幅な供給過剰になる」との見通しを示した。OPECとロシアなどの大産油国が構成するOPECプラスの増産に加え、他の産油国からも供給が増加することがその理由だ。

 OPECは第3四半期の状況判断も変更した。1カ月前、「日量40万バレルの供給不足」としていたが、今回、「日量50万バレルの供給過剰」と改めた。

 これまで「世界の原油市場は供給不足だ」と主張してきたOPECが見方を一変させたため、市場では「売り」が大きく広がった。

 強気予想を変えたものの、国際エネルギー機関(IEA)の予測との間に大きな乖離があり、OPECは今後、供給過剰の認識をさらに強める可能性がある。

 IEAも従前の予想を改めた。12日に発表した世界エネルギー見通しで「世界の原油需要は2050年まで伸びる可能性がある」との見解を示し、バイデン政権下での予測(世界の原油需要は2030年までピークを迎える)を変更した。

 IEAは翌13日に発表した月報で「世界の原油市場は来年、最大で日量409万バレルの大幅な供給過剰に直面する」との見方を示した。

 産油国の個別の動向をみてみると、OPECプラスの原油生産量は抑制気味だ。

 日量13万7000バレル増産することで合意していたが、10月の生産量は前月比7万3000バレル減の日量4302万バレルにとどまった。

 カザフスタンの減産が主要因だ。主力油田がメンテナンス期間に入ったため、同国の原油生産量は前月比17万バレル減の日量169万バレルとなったものの、生産枠(同156万バレル)を超える状況が続いている。

 OPECプラスのライバルである米国の原油生産は好調だ。直近の生産量は日量1386万バレルとなり、このところ過去最高を更新し続けている。

 需要面では米中2大需要国の状況が対照的だ。