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(英エコノミスト誌 2025年11月8日号)

Werner HeiberによるPixabayからの画像

良い意味でも、悪い意味でも形を変えている。

 人類史ではほぼずっと、配偶者を得ることは単に当たり前のことではなく必然だった。

 頼りになる避妊法が普及するまで女性は子供を作るか否かを自分でコントロールできなかったし、独りで産み育てることなど貧しさゆえにとてもできない場合がほとんどだった。

 そのため、悲劇的なケースは死で幕を下ろし、幸せなケースは結婚で終わるというのが何世紀も前からのしきたりだった。

 それだけに、結婚というしきたり――それどころか、あらゆる種類の関係のしきたり――が廃れていくペースには目を見張るものがある。

 今の裕福な国々では独身者の割合が高まっている。

 25~34歳の米国人のうち、配偶者やパートナーがいない人の割合はここ50年で倍増しており、今や男性で50%、女性で41%に達している。

 また裕福な30カ国のうち26カ国では2010年以降、一人暮らしをする人の割合が高まっている。

 本誌エコノミストの試算によれば、今日の世界全体における独身者の数は、婚姻率が2017年の水準を保っていた場合に比べて少なくとも1億人多くなっている。いわば「カップル大不況」が進行中なのだ。

モラル崩壊の証拠か自立の証拠か

 一部の人にとっては、こうした現状は社会やモラルが崩壊している証拠だ。本誌が報じているように、プロナタリズム(出生奨励主義)運動の多くは、若者が身を固めて子供を作ることができなければ西洋文明が終わりかねないと考えている。

 そうかと思えば、これは立派な自立の証拠だと受け止める人もいる。

 ファッション誌ヴォーグは最近、かっこよくて野心的な若い女性にとって、ボーイフレンドがいることは不必要なだけでなく「恥ずかしい」ことだと示唆していた。

 実を言えば、独身者の増加は単純に良いものでもなければ単純に悪いものでもない。

 異性愛者(このテーマの調査・研究が最も多く行われているグループ)の場合、総じて言えば、独身者の増加は明らかに良いことの結果だ。

 まず、職場で女性の活躍を阻む制度などがなくなるにつれて、女性の選択肢が広がった。

 昔に比べれば、自ら進んで一人暮らしをすることもはるかに容易にできるようになっているし、そうすることで世間から冷たい視線を浴びることも減っている。

 また、自分の暮らしを支える経済力がつけばつくほど、自分にふさわしくなかったり暴力的だったりするパートナーに我慢することもなくなる。

 この変化によって数え切れないほど多くの女性がひどい関係から救い出され、多くの男性が別れたくないのであれば配偶者をもっと大事にすることを強いられた。

 しかし、これにはありがたくない波及効果が伴う。

 一人暮らしは解放的なものになり得るが、孤独な生活にもなる。独り身であることに満足している独身者は多い。女性では特にそうだ。

 だが、様々な国で実施されたアンケートによれば、誰かとカップルになる方がいいと答えた独身者の割合は60~73%に達する。

 また2019年に米国で行われた世論調査では、独身者の50%はパートナーを積極的に探していなかったものの、それは独身生活を楽しんでいるからだと答えた人は27%にすぎなかった。

 独身者の多くはパートナーを探すことに絶望するか、パートナーの候補がいても高い評価を付けずにあきらめてしまっているのだ。