供給サイドの状況は?ロシア制裁解除なら深刻な供給過剰に
スイスの石油商社ガンバーグループのトルンクビストCEOは5日「欧米のロシアなどに対する制裁によりタンカーに積載されたままの原油の量は過去最大の規模だ。制裁が解除されれば、これらが市場に流れ込み、極めて深刻な供給過剰となる」との認識を示した。
英金融大手HSBCも11月4日「OPECプラスは市場シェアの回復に向け、来年第2四半期と第3四半期に原油生産量を増加させる」とした上で「OPECプラスの増産意欲は強く、原油価格が長期にわたって1バレル=50ドルを下回る状況とならない限り、減産を検討することはない」と予測している。
OPECプラスのライバルである米国の原油生産は相変わらず好調だ。直近の生産量は日量1365万バレルと過去最高を更新している。
だが、低油価が続くとなれば話は別だ。
エネルギー調査企業クプラーは「1バレル=50ドルの原油価格が続けば、米国の原油生産量は日量70万バレル減少する」と予測している。
需要面を見てみると、世界の原油需要は今後、季節要因で停滞する可能性が高いが、「長期的には世界の原油需要は堅調だ」との見解が増えている。
仏エネルギー大手トタルエナジーズのプイヤスCEOは11月3日「中国の年間ベースの原油需要の伸びは日量60万バレルから同30万バレルに減少しているが、インドの年間ベースの原油需要の伸びが同20万バレルと見込まれるため、世界の原油需要は心配ない」と強気の姿勢を示した。
中国の原油積み増しの動きには目を見張るものがある。トータルの原油備蓄量は12億~13億バレルに達するとの試算が出ているほどだ。
原油を大量に積み増すためには安価な原油が不可欠だ。中国は欧米の制裁によりさらに割安となったロシア産原油の購入を続けるとの観測が出ている。
だが、備蓄需要とは対照的に中国の実需は堅調とは言えない状況だ。