高市早苗首相は「政治とカネ」の問題にどう向き合う?(写真:AP/アフロ)
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「政治とカネ」をめぐる国民の不信感がなかなか払拭されません。その中心は企業・団体からの政治献金をどう扱うかです。巨額の献金と引き換えに、特定の業界や団体のための政策を遂行しているのではないか――。そんな懸念を背景として、「企業・団体献金の禁止」は30年以上も前から繰り返し国会で議論されてきました。しかし、企業献金に大きく依存してきた自民党の反対などによって、禁止は実現に至っていません。過去の経緯も踏まえつつ、「企業・団体献金」をやさしく解説します。

フロントラインプレス

自民党の裏金問題が契機、企業・団体献金をめぐる攻防

 高市早苗政権が発足する前、自民党は「政治とカネ」問題の矢面に立たされていました。2022年から23年にかけ、派閥の政治資金パーティーを利用した巨額の裏金づくりが相次いで発覚。多くの有力議員が「裏金議員」として、党の役職を解かれるなどの事態に陥りました。2024年10月の衆院選、2025年7月の参院選で自民党が立て続けに敗北したのも、裏金問題に象徴される「政治とカネ」に対し、有権者が厳しい審判を下したからです。

 その間、国会では「政治とカネ」問題の根幹を成す企業・団体献金をどう扱うかの協議が与野党間で続いていました。ところが、通常国会会期末のことし6月、衆院の政治改革特別委員会理事懇談会は法案を採決せず、継続審議(次の国会で審議を続けること)にしたのです。あからさまな結論の先送りです。

 継続審議となった法案は2つあります。1つは、企業・団体献金の存続を前提とし内容の公開度を高める、という自民提案の「公開強化」法案。もう1つは、企業・団体献金の「禁止」法案です。立憲民主党と日本維新の会、参政党、社民党、衆院会派「有志の会」の野党5党派が提案しました。野党側は禁止法案の採決を強く求めましたが、自民党が同意しませんでした。

図版:主要政党の「企業・団体献金」収入=2023年(フロントラインプレス作成)図表:主要政党の「企業・団体献金」収入=2023年(フロントラインプレス作成)

 この事例が象徴するように、企業・団体献金については「容認の自民」「反対の立憲など野党」という図式が定着しています。しかも、企業献金の問題が顕在化したのは1970年代のこと。国政選挙では、5億円を使えば当選、4億円では当選できないという意味の「5当4落」が当たり前とされ、自民党総裁選でも何十億円ものカネが飛び交ったとされました。その原資のほとんどが企業からの政治献金だったのです。

「政治資金の名目で、毎年何百億円もの金が政治団体に献金されている。このうち、約半数は大手の企業や団体からの出資で、ほとんどが自民党や同党の派閥団体に集中している。つまり、自民党の政治の台所はほとんど大企業によってまかなわれているわけで、こうしたことから企業との腐れ縁や黒いなどが絶えず、問題になっている」

 こう記したのは、『国民不在の悪循環 規正法改正さぼるな/歯止めない政治のカネ』と題する1970年6月25日の読売新聞記事です。今から半世紀以上も前の記事ですが、論点が現在とほとんど変わっていないことに驚かされます。