決まったはずの「企業献金廃止」、なぜ実現しないのか
現在につながる企業・団体献金の禁止は、1994年に成立した一連の政治改革4法に盛り込まれたものです。
このときの政治改革は「中選挙区制の廃止=小選挙区比例代表並立制」の導入を決める大きなものでしたが、そのなかで政治資金に関する改革も行われました。中心は、企業団体献金の廃止と、それに代わる資金源として税金を原資とする「政党交付金」を導入することでした。
ただし、急に企業献金を禁止すると政党運営などに大きな支障が出かねないことを懸念し、5年後をめどに政党への企業・団体献金のあり方を見直すことを政治改革4法の附則で明記したのです。当時、非自民連立政権の細川護熙首相と野党だった自民党の河野洋平総裁は、これらの政治改革に合意した際、「(企業・団体献金については)5年後の廃止をはっきりとうたった」と強調しました。
ところが、それ以降、このときの合意は無視され続けてきました。
河野氏はこの合意から25年が経過した時点での回顧録で「(細川首相との)トップ会談で決めたのは、小選挙区制でいくよ、それから企業献金はやめるよという、この2つ」と強調。さらに「(政党への)公費助成が実現したら企業献金は本当は廃止しなきゃ絶対におかしいんですよ。しかも、激変緩和のため5年後に見直すと法律の附則に書いたのにスルーした。見向きもしないでスルーしてもう25年たったんだからね」と述べ、自民党と国会の姿勢に強い疑問を呈しています。
その後も企業・団体献金の禁止を求める野党側と、全面禁止には強硬に反対し部分改革で対応しようとする自民党の間で、駆け引きは続いてきました。
高市政権誕生の際、自民党と維新が交わした合意書は、企業・団体献金について「特定の企業団体による多額の献金が政策の意思決定をゆがめるのではないかという懸念を払拭し、国民に信頼される政治資金の在り方を追求し、そのための制度改革が必要であるとの課題意識は共有しつつも、現時点で最終結論を得るまでに至っていない」と指摘。両党による協議体を2025年の臨時国会中に設置し、高市氏の任期中に結論を得るとうたっています。
しかし、この合意に際し、維新は突然、「献金問題よりも衆院議員の定数是正が大事だ」との主張を持ち出し、献金問題を後回しにする姿勢を見せています。開会中の臨時国会で、自民と維新は国民を納得させる成案を得ることができるのでしょうか。
フロントラインプレス
「誰も知らない世界を 誰もが知る世界に」を掲げる取材記者グループ(代表=高田昌幸・東京都市大学メディア情報学部教授)。2019年に合同会社を設立し、正式に発足。調査報道や手触り感のあるルポを軸に、新しいかたちでニュースを世に送り出す。取材記者や写真家、研究者ら約30人が参加。調査報道については主に「スローニュース」で、ルポや深掘り記事は主に「Yahoo!ニュース オリジナル特集」で発表。その他、東洋経済オンラインなど国内主要メディアでも記事を発表している。



