② 維新が壊滅する

 自民党と連立政権を組んだ日本維新の会の吉村洋文代表は「選挙協力は必要ない」と繰り返す。その理由として、「多党化のヨーロッパなどでは選挙協力をしないで連立を組んでいるケースもある」などを挙げている。

 選挙を脇に置いて、連立合意を急いだことを正当化する目的もあるだろうが、選挙協力は「必要ない」ではなく、「できない」が現実だ。

 昨年の衆議院選挙で見ると、自民系と維新系の候補が競合したのは全289の小選挙区のうち155と、実に半数以上もあった。結果は自民68勝、維新19勝(その後1人除名)。自民の勝利区は全国に分散しているが、維新は全て大阪の選挙区だ。

「選挙協力は通常、現職優先。維新との選挙協力で、大阪の選挙区を丸ごと維新が取るということになれば、自民党の大阪府連が猛反発する。一方で、大阪以外の維新の議員は比例復活当選ですから、選挙区で勝利している自民側が全部もらうということになり、維新側は反対するでしょう。選挙協力をしようと思っても揉めるので、易々とはやれないのです」(自民党ベテラン議員)

 維新所属の衆議院議員は34人。自民との選挙協力で半数近い現職が選挙区を失うことになりかねない。選挙をすれば維新は壊滅し、連立政権どころではなくなる。

「早期解散の大義として、維新が連立合意の“一丁目一番地”と主張する『衆議院の定数1割削減を争点にすればいい』という意見がある。議員減らしは世論の受けがいいので、定数削減に反対する政党に守旧派のレッテルを貼り、選挙を『守旧派vs改革派』の戦いにできるということだが、維新はますます大阪の『地域政党』になっていくだろう」(前出の自民党ベテラン)

 1割の定数削減は比例区が対象とされる。定数削減を争点にした解散は、大阪以外では比例でしか議席を得られない維新にとって自己矛盾でもあるのだ。

 そもそも、吉村代表が言うように、有権者の考えが多様化し、多党化の時代に入っていることは否定しようがない。だとすれば、「政権交代のある2大政党制」を標榜した小選挙区制度こそが多党化の現状にマッチしなくなってきているのに、小選挙区はそのままに比例だけ減らすのはどう考えてもおかしい。

 定数削減は、中選挙区に戻すとか、全ての議席をむしろ比例だけにするなど、選挙制度改革とセットで行う必要がある。

 10月31日に自民党の選対役員会合が開かれたが、古屋圭司選対委員長は「シミュレーションすると、維新との競合は最大で164選挙区が関係してくる」「全て調整するということは果たしてどうなのか」と発言したという。

 自民党も維新との選挙協力が無理筋だということをよく分かっている。解散・総選挙をするなら、維新との選挙協力をどうするかは難題だ。

連立政権に合意した自民党の高市総裁と日本維新の会の吉村洋文代表だが、先行きは不透明な情勢だ(写真:共同通信社)