処方的知識と命題的知識の好循環
今年のノーベル経済学賞は米ノースウエスタン大学のジョエル・モキイア教授、仏コレージュ・ド・フランスのフィリップ・アギヨン教授、米ブラウン大学のピーター・ホーウィット教授に授与されると発表された。中国の「科学技術の自立・自強」を先取りする内容だった。
モキア氏は「科学が理論を生むだけでは不十分。それを理解し実装できる社会(職人・技術者・制度・文化)がなければ革新は一過性に終わる」と科学(ユーレカ=理論的知)と社会実装(応用・技術的知)の両輪が産業革命以降の「持続的経済成長」を生んだと説明した。
持続的成長の鍵は科学と技術の共進化だ。発端は啓蒙時代のユーレカに遡るが、産業革命を持続的経済成長に導いた要因は「有用な知識」の拡大。有用な知識には自然現象や物理的世界の規則性に関する命題的知識と実際に物事がどのように機能するかを体得する処方的知識がある。
命題的知識が処方的知識に流れ込み、処方的知識は命題的知識にフィードバックされ、命題的知識を刺激する。技術の実行方法を変化させることが新しい器具や道具の開発につながり、フィードバックループを強化する。このような好循環が互いの限界生産性を高めてきた。