緊急銃猟の4条件とは
緊急銃猟とは、市町村の権限と責任により住宅地などであってもクマなどへの発砲を認めるという制度です。ことし9月に施行された改正鳥獣保護法に盛り込まれました。それまでの旧法は住宅密集地での発砲を原則禁止しており、クマが市街地に現れてハンターが出動しても、発砲できるのは警察官の命令があった場合などに限られていました。
そのため、クマの駆除に時間を要したり、適切な対応を取ることができなかったりして、クマを取り逃すケースなどが頻繁に生じていました。
環境省によると、緊急銃猟を実施するためには以下の4条件を満たしている必要があります。
(1)クマやイノシシが人の日常生活圏に侵入していること。その恐れが大きいことを含む
(2)クマやイノシシによる人命または身体への危害を防止するため、緊急に対応が必要であること
(3)銃猟以外の方法では的確かつ迅速な捕獲等が困難であること
(4)住民や第三者に銃猟による危害を及ぼすおそれがないこと
これら4条件を全て満たした場合、市町村長は、市町村職員に指示または職員以外の者(猟友会のハンターなど)へ委託し、対象動物を銃器により捕獲・駆除することが可能になります。実施場所として想定されているのは、人の日常生活圏である住居や住宅街、広場、生活用道路、商業施設、農地など。発砲は人の安全が必ず確保されると判断された場合に実施されます。
緊急銃猟に全国で初めてのゴーサインを出したのは、山形県鶴岡市でした。それは9月20日のこと。体長1.1メートルの雌のクマが住宅地に入り込み、民家の庭の木の下で1時間以上も動かなくなりました。このため、鶴岡市長は緊急銃猟を決断し、地元猟友会に実施を委託したのです。
ただ、周囲の安全確認が終わる前に猟友会のハンターに向けてクマが突進してきたため、現場に臨場していた警察官が警察官職務執行法に基づいて発砲を指示。ハンターは1発でクマを仕留めましたが、緊急銃猟という仕組みの中での駆除とはなりませんでした。
緊急銃猟によって発砲が行われた最初のケースは、仙台市です。10月14日の夕方、同市太白区の住宅街付近の山林にクマが現れ、その場所に留まりました。状況を確認した仙台市は、①クマは住宅から十数メートルという至近距離の茂みに居座っている、②放置すれば生活の場に侵入する恐れが大きい、③発砲しても人に危害が及ばない―などして緊急銃猟の4条件を満たしたと判断しました。そのうえで付近の道路では通行制限を実施。10月15日早朝、ハンターが猟銃を使用し、1発で駆除したのです。
緊急銃猟による発砲の2例目は、群馬県昭和村。さらに新潟県魚沼市や秋田市、札幌市などでも緊急銃猟が実施されています。