AI時代には「知の三角測量」が必要になる(写真はPixabayからの画像)

海外ではクロス検証が当たり前に

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 生成AIが社会に浸透してから1年余り。

 私たちは、AIが驚くほどのスピードで進化していく姿を目の当たりにしています。

 会話も自然になり、専門的な文書も短時間で書き上げる。確かに便利です。しかしその一方で、避けて通れない課題が浮かび上がってきました。

 AIが「それらしく語る誤情報」、いわゆる「ハルシネーション(幻覚)」です。

 ハルシネーションはAIの弱点としてしばしば批判されますが、私はそれを悲観的には捉えていません。むしろ、人間とAIの関係を成熟させるチャンスだと考えています。

 AIを一つの絶対的な真実と見るのではなく、複数のAIの意見を比較しながら真実に近づく時代が来たからです。

 私はこの考え方を「セカンドAI」と呼んでいます。

 海外ではこの手法がすでに「クロスAI検証(Cross-AI Validation)」として注目されています。

 AIの出力を、別のAIによってクロスチェックするという考え方です。

 医療の世界では、複数の医師に意見を求める「セカンドオピニオン」が当たり前になっています。1人の医師だけに頼らず、異なる専門家の視点を比較することで、診断の精度を高めるわけです。

 AIにも、これと同じ発想が有効だと感じています。

 私は仕事で米オープンAIが提供している「ChatGPT(GPT-5)」を主に使っていますが、重要な内容については必ず別のAI、例えばグーグルの「Gemini」にも同じ質問をします。

 2つのAIが同じ答えを出すこともあれば、驚くほど違う視点を示すこともあります。この違いこそが、実は最も価値のある部分なのです。

 AIは訓練データも設計思想も異なります。GPTは文章構成力と論理展開が得意で、米国のAIスタートアップ、アンスロピック(Anthropic)が開発した「Claude」は、倫理的・哲学的な推論に強い。Geminiは検索連携や最新情報に優れています。

 つまり、AIはそれぞれ異なる文化圏で育った知性なのです。