自動車メーカーが覇を競い合うBEVの航続性能だが…(写真はイメージ、Guitar photographer/Shutterstock.com)
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(井元 康一郎:自動車ジャーナリスト)

BEVの航続性能はユーザーが重視する三大要素のひとつ

 バッテリー式電気自動車(BEV)の“航続距離戦争”が過熱の様相を呈している。

 10月8日に日産自動車が第3世代「リーフ」を発表。2種類のバッテリーのうち総容量75kWhのものを積む「B7」の公称航続距離は702kmと、国産メーカー勢の市販BEVとしては初めて700kmのラインを突破した。

日産の第3世代「リーフB7」。75kWhバッテリーを搭載し、公称航続距離702kmを達成

 だが、その天下が続いたのはわずか1日。翌日トヨタ自動車が「bZ4X」の改良版を航続距離746kmという謳い文句でリリースしたのだ。

リーフ発表翌日にトヨタが発売した改良型「bZ4X」。74.7kWhバッテリー・2WDの公称航続距離はリーフの702kmを上回る746km

 航続性能を巡って自動車メーカー各社がデッドヒートを繰り広げる理由は至ってシンプルなものだ。

 航続性能は価格、長期品質とともにユーザーがBEVにアレルギーを抱く三大要素。航続距離の数値を上げることはそのアレルギーを緩和し、メーカーの優秀性を印象づけるのに有用であると作り手が踏んでいるからである。

 その数値を巡って優劣を競い合うこと自体は別に悪いことではない。しかし、昨今のBEVの状況を見るに、日本に限らず世界的に航続性能の数値が一人歩きしている感がある。各社が実際には到底出せないような数値をいかにして審査値として出すかということに拘泥し、公称航続距離の信頼性がどんどん低下しているのだ。

 まず日本で販売されているBEVの一部の公称航続距離を参考に列記してみよう。