「ドールフェティシスト」と呼ばれる人たち
──デイブキャットは持っているすべてのドールと性関係を持つのですか?
濱野:シドレ以外のドールともセックスをすることはあり、ポリアモリーな関係を築いていますが、保有するすべてのドールと性関係を持つわけではありません。全くそういうことをしないドールもいるそうです。
対してジムは、いくら相手がドールであっても、やはり浮気をすることは耐えられないそうです。複数のドールを持ち、それぞれと関係を持つようなことは自分にはできないと言っていました。
デイブキャットのドールたち(写真:著者提供)
──ジムはまだ人間にも興味があるのですか?
濱野:いえ、ジムはもう人間とは恋愛関係にはならないと決めています。彼はアンナと結婚するかどうかを見極めるのに5年かかったと言っていました。それは、人間の女性と二度と恋愛関係にならないと決断するまでにかかった時間です。
──デイブキャットにしてもジムにしても、ひとたび誰か・何かを愛すると決めると、その愛は揺るぎないという印象を受けました。
濱野:さらに両者に共通する点は、想像力の強さです。ジムもデイブキャットと同じで、日々アンナのエピソードを紡ぎ出しています。ドールは物語を付与されることによってパーソナリティーを確立していくのです。
ジムは子どもの時から、自分の中にイマジナリーフレンドがいたそうで、架空人物を想像して、その人と関係を作っていく想像力が強いのだと思います。
──デイブキャットやジムの共通の友人のマイクは、複数のドールと生活していますが、彼のドールに対する愛情は、より性的な対象のコレクションかのような印象を受けました。
濱野:「ドールフェティシスト」と呼ばれる人たちがいて、マイクはどちらかというと、そうしたタイプなのだと思います。マイクは、ドールがいなくなったら悲しいぐらいには愛着を持っていますが、ドールのパーソナリティーや内面を作りません。
彼はドールの外見的な美しさや存在感を愛しているようです。彼にとってドールは性的なことをする相手ではありますが、あくまで物なのです。彼は何体もドールを持っています。物語を作る面倒もないので、何体でも持てるのです。