理研と富士通が開発した256量子ビット超伝導量子コンピューター(写真:日刊工業新聞/共同通信イメージズ)

「量子をチップ上で操る」時代を開く

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[ロンドン発]スウェーデンの王立科学アカデミーは10月7日、次世代の量子技術である量子暗号や量子コンピューター、量子センサーの開発を可能にした米カリフォルニア大学サンタバーバラ校のジョン・マルティニス名誉教授ら3氏にノーベル物理学賞を授与すると発表した。

量子トンネル効果の研究でノーベル物理学賞を受賞したジョン・マルティニス氏。自宅リビングで妻のジーンさんと喜びを分かち合う(写真:AP/アフロ)

 他の2氏はカリフォルニア大学バークリー校のジョン・クラーク名誉教授、エール大学のミシェル・デボレ名誉教授。3氏は1984~85年、手のひらサイズの電気回路で量子力学のトンネル効果とエネルギー量子化を実証した。

 普通の世界では「ボールを壁に投げると必ず跳ね返る」けれど、量子の世界では「小さな粒が壁をすり抜けて出てくる」ことがある。この「トンネル効果」が起きるのかを3氏は電気を流しても全く抵抗がない超伝導体を使って確かめた。

 電気回路の中のエネルギーは階段のように段々になっている(エネルギーの量子化)ことも分かり、この原理を使いマルティニス氏は「0」「1」の両方の状態を同時に扱える超伝導量子ビットを開発。「量子をチップ上で操る」時代を開き、量子コンピューターの基礎を築いた。