プロ野球通算安打の世界記録保持者で数々の偉業を成し遂げたイチロー氏(写真:AP/アフロ)
たった一つの言葉によって、発想がガラリと変わって物事を見る視点が変わり、状況を大きく打開するようなヒントが得られることもある。歴史上の天才たちは、思考プロセスも独特であり、だからこそ常人にはたどり着けない偉業を残すことができた。そんな天才たちの言葉は、現代を生きる私たちにも思わぬ気づきを与えてくれる。本稿では、往年の名スポーツ選手が残した名言を紹介する。
(*)本稿は『壁をブチ破る天才100の言葉』(真山知幸著/彩図社)の一部を抜粋・再編集したものです。
【勇気ある挑戦を後押ししてくれる言葉】タイガー・ウッズ、力道山
天才と呼ばれる人の中でも、大勢の観客の前でプレーするスポーツ選手には、極めて高い瞬発力と集中力が求められる。それだけに、発想もまた独特だ。アスリートの名言を紹介していこう。まずは、挑戦心をかきたてられる言葉を2つ紹介する。
ゴルフ界の怪物として名を残したタイガー・ウッズ。幼少期からゴルフを始め、全米アマチュアトーナメントで1994年~1996年まで前人未到の3連覇を達成。プロになっても勢いは増すばかりで、マスターズ最年少優勝記録を21歳で塗り替えた。そんな天才ゴルファーの心得がこの言葉だ。
「届かないパットは絶対にカップインしない」
オーバーするのを恐れてつい短く打ってしまうのがパッティングの難しいところ。1回のパッティングでカップインを狙うウッズは、弱気な私たちの背中をこう押してくれる。
「もしオーバーしたら、その時点で次を考えればいい」
積極的な失敗は、消極的な失敗よりも価値がある──。これは何もゴルフに限ったことではないだろう。リスクを恐れて保身に流されそうなとき、活を入れてくれる名言だ。
2025年2月16日、ジェネシス・インビテーショナル・ゴルフトーナメントの最終ラウンドでパッティンググリーンの横を歩くタイガー・ウッズ(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)
力士を廃業した力道山が、プロレスに転向したのは1951年のことである。その後渡米し修行を重ねた力道山は、翌年、帰国して日本プロレスリング協会を設立する。
時は、街頭テレビが設置され始めた頃。必殺の空手チョップで外国人レスラーをなぎ倒していく姿に人々は熱狂した。
1961年7月3日に行われた日本プロレスリング同盟のイベント中に立つ力道山(写真:木村守綱/アフロ)
力道山がアメリカ修行時代に同僚に語ったのがこの言葉だ。
「人の上に立って成功するには、方法はたったひとつしかないぞ。それは過去に誰もやったことのないことを一生懸命やることだ」
生前は隠さざるを得なかった朝鮮出身であるという生い立ち、結果的に挫折してしまった相撲。厳しい境遇から這い上がろうとする強い気迫に満ちあふれている。
彼の戦いは、戦後の人々に希望を与え続けた。まさに誰も成し得なかったことを達成したと言えるだろう。
道なき道をゆくのは孤独で不安がつきものだが、だからこそ行く価値がある。そう勇気づけてくれる言葉だ。
