就労ビザ「H1-B」は取得に1500万円

 トランプ氏はさらに9月中旬、IT分野など専門職の就労ビザ「H1-B」の取得に10万ドル(約1480万円)という破格の手数料を課す大統領令に署名しました。新規の申請者にのみ適用されるということですが、トランプ氏はこの高額なビザを「ゴールドカード」と呼び、富裕層優遇を明確にしています。

 大統領令は「このビザは、熟練していない低賃金の米国人労働者の職を奪っている。米国の経済と国家の安全保障を損ねている」と主張。超高額の手数料を課す背景には「アメリカ・ファースト」のスローガンの下、米国人の雇用を確保し、米国経済を浮上させようとの思惑があるのは間違いありません。

 H1-Bビザ手数料の引き上げ決定を受け、マイクロソフトやアマゾンといった米国のIT企業は、H1-Bビザ所有の社員に対して、米国外に出ることを控え、また決定が施行される前に米国に戻るよう指示を出したといいます。新制度下で外国籍の社員の再入国に支障が出ることを懸念しての措置です。

 米国のIT企業は全世界から有能な技術者を集めています。この技術者たちの身分が不安定になり、いつ送還されるか分からない状態に置かれるならば、米国経済に悪影響を与えるのは避けられません。

 韓国のような長年の同盟国に対しても容赦なく厳しい対応をするトランプ政権。パレスチナ自治政府のアッバス議長らは、米国からビザ発給を拒否され、9月の米ニューヨークでの国連総会に出席できませんでした。ビザを政策遂行の道具として使うトランプ氏の姿勢に、国際的な批判も増大しています。

 トランプ政権がビザ制度に関する強硬姿勢を続けるのはなぜなのでしょう。