10年ほど前、在日韓国・朝鮮人に対する激しいヘイトスピーチが広がった。写真は、ののしりながらデモ行進する人たち=2013年6月30日、東京都新宿区(写真:共同通信社)
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「選挙運動の名の下に露骨なヘイトスピーチが繰り返されていた」――。この7月の参院選で、こうした声が急速に広がりました。外国人への規制強化をうたう政治家や政党の勢力拡大もあって、主にSNS上でのヘイトスピーチはその後も止まりません。10月4日に投開票される自民党総裁選の主要テーマの1つが外国人規制になったことも、この傾向に拍車を掛けているとされています。では、そもそもヘイトスピーチとはどのようなものでしょうか。知っているようで知らない「ヘイトスピーチ」をやさしく解説します。

フロントラインプレス

罵声や恫喝が社会問題に

 10年ほど前、日本の街頭では、特定地域の出身者を狙い撃ちにした「ヘイトデモ」が、繰り返されていました。主なターゲットは在日韓国人・朝鮮人。デモを主催していたのは、在特会(在日特権を許さない市民の会、2023年ごろ活動停止)をはじめ極端な民族主義、排外主義をとなえる団体でした。

 街頭でのデモ活動は在日韓国人が集中して住むコリアン・タウン近辺で行われることが多く、活動の様子は多くの市民の目にも映りました。

「差別は許さない」と、ヘイトスピーチに対抗して集まってきた市民たち=2017年7月、川崎市(フロントラインプレス撮影)

 例えば、2017年7月に川崎市内で行われたヘイトデモでは、数百人の参加者が在日コリアンたちに向かって「ゴキブリ」「ウジ虫」「ぶっ殺すぞ」「半島へ帰れ」などと、拳を振り上げながら大声でコール。さらには「日本を貶(おとし)めるな」「韓国人は1匹残らずたたき出してやる」「真綿で首を絞めるように苦しめてやる」「1人残らず日本から出て行け」といった内容のプラカードも掲げ、周囲の人を威嚇しながら行進しました。

 こうした街頭活動は、東京・大久保、大阪・鶴橋など在日韓国人・朝鮮人の集住地域で頻繁に発生。罵声や恫喝(どうかつ)、聞くに堪えないコールは大きな社会問題となります。

 さらに、朝鮮学校に通う子どもたちの服がカッターナイフで切られたり、ヘイトデモに反対する市民との間で小競り合いが起きたりする出来事も頻繁に発生。このため、差別を許さぬ日本をつくろうと、新たな法律を制定してヘイトスピーチを抑制する議論が進みました。

 その結果、議員立法によってヘイトスピーチ解消法ができたのです。成立は2016年。来年5月で10周年を迎えます。