ネットでヘイトスピーチが拡散

 三菱総研が2024年11月に公表した「インターネット上の違法・有害情報に関する流通実態アンケート調査」(回答者約8600人)によると、SNSの「X」で「ヘイトスピーチに当たりうる投稿を見たことがある」と答えた人の割合は60.6%にも達しました。同じ調査では、YouTubeで「見た」が19.5%、Yahoo!ニュースのコメント欄では「見た」が11.2%と回答。Xの突出が際立つ結果となっています。

 こうしたなか、フランスのイダルゴ・パリ市長は2023年11月、ヘイトスピーチが横行し憎悪を増幅させるXを「巨大な世界規模の下水道だ」と非難し、Xから退会しました。

 さらに、Xの公式アカウントに約220万人のフォロワーがいたパリ市もことし1月、「現在のXは人種差別をあおるヘイトスピーチを助長している」としてアカウントを閉鎖。また、ブラジルもヘイトスピーチが野放しにされているとして、2024年8月末から10月初旬にかけ、同国内でのX利用を停止させていました。

 しかしながら、日本では、インターネット空間におけるヘイトスピーチ対策は遅れ気味です。

 総務省の違法・有害情報相談センターによると、ネット上の誹謗中傷などの被害相談は、相談すべてがヘイトスピーチ関連ではないものの、2023年度に6400件となり、10年前の2倍強になりました。

 そして法務省は、2026年度に初めてSNSなども含めた実態調査に乗りだす方針を示しています。ヘイトスピーチ解消法の施行から来年で10年。遅まきながらようやく、政府の名において実態を把握する施策が始まるのです。

フロントラインプレス
「誰も知らない世界を 誰もが知る世界に」を掲げる取材記者グループ(代表=高田昌幸・東京都市大学メディア情報学部教授)。2019年に合同会社を設立し、正式に発足。調査報道や手触り感のあるルポを軸に、新しいかたちでニュースを世に送り出す。取材記者や写真家、研究者ら約30人が参加。調査報道については主に「スローニュース」で、ルポや深掘り記事は主に「Yahoo!ニュース オリジナル特集」で発表。その他、東洋経済オンラインなど国内主要メディアでも記事を発表している。