なにが「ヘイトスピーチ」か

 ヘイトスピーチ解消法の正式名称は「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律」で、その前文にはヘイトスピーチを許さないという明確な姿勢が示されています。

「近年、本邦の域外にある国又は地域の出身であることを理由として、適法に居住するその出身者又はその子孫を、我が国の地域社会から排除することを扇動する不当な差別的言動が行われ、その出身者又はその子孫が多大な苦痛を強いられるとともに、当該地域社会に深刻な亀裂を生じさせている。

 もとより、このような不当な差別的言動はあってはならず、こうした事態をこのまま看過することは、国際社会において我が国の占める地位に照らしても、ふさわしいものではない。

 ここに、このような不当な差別的言動は許されないことを宣言するとともに、更なる人権教育と人権啓発などを通じて、国民に周知を図り、その理解と協力を得つつ、不当な差別的言動の解消に向けた取組を推進すべく、この法律を制定する」

 日本以外の出身者であること、すなわち、生まれてきた当人には一切責任がない民族の相違を理由として、日本社会から追い出そうとしたり危害を加えようとしたりする差別的な言動・煽動を、「ヘイトスピーチ」と位置づけたのです。

 この差別的言動には「生命、身体、自由、名誉もしくは財産に危害を加える旨」を告げたものが含まれます。したがって、「○○人は出て行け」「祖国へ帰れ」「○○人は殺せ」「○○人は海に投げ込め」などの言動は許されません。

 ヘイトスピーチに直面した当事者たちは、いったい、どれほどの悲しみや恐怖、絶望感などを抱いたでしょうか。ヘイトスピーチは人々に不安感や嫌悪感を与え、人としての尊厳を傷つけたり、差別意識を拡大させたりすることになりかねません。

 国連広報センターによると、ヘイトスピーチは単なる悪口ではありません。歴史的には、一定の政治目的を達成するために意図的に民族・人種の憎悪を煽ることも頻発しています。

 ナチス・ドイツによるユダヤ人のホロコースト、カンボジアにおけるポル・ポト政権の住民虐殺、ミャンマーにおけるロヒンギャ難民の殺りくなどは、いずれも最初は「小さなヘイトスピーチ」だったとされています。