「ヘイトスピーチは犯罪」に

 日本のヘイトスピーチ解消法はいわゆる「理念法」にとどまり、違反者に対する罰則規定は設けませんでした。そして、具体的な対策は自治体に任せることとし、国は啓蒙レベルでの活動しか手掛けない形としたのです。

 では、自治体の状況はどうなっているでしょうか。

 一般財団法人・地方自治研究機構のまとめによると、ことし8月現在、全国10の自治体にヘイトスピーチの拡散を防止する条例があります。都道府県レベルは、東京都と大阪府、愛知県、沖縄県の1都1府2県。市レベルでは、大阪市、群馬県太田市、神奈川県の川崎市と相模原市の4市。そのほか、東京都渋谷区、宮城県木城町もヘイトスピーチに関する条例を制定しました。

 このうち、国の法律より早く条例をつくったのが大阪市です。

 大阪市の条例はヘイトスピーチ解消法より踏み込んだ内容になっているのが特徴で、ヘイトスピーチを行った者は一定の条件下で氏名などを公表されます。その対象には、インターネットでヘイトスピーチ動画を公開した場合なども含まれます。

 一方、全国で唯一、罰則を設けているのが川崎市の条例です。条例の規定に反してヘイトスピーチを行った者・させた者には、最終的に50万円以下の罰金が科せられます。つまり、「ヘイトスピーチは犯罪」。条例違反で有罪となったケースはまだ出ていませんが、条例制定から5年を迎えたことし7月、福田紀彦・川崎市長は記者会見で「明確な違反言動が行われなくなってきたことは、条例の一定の成果」と強調しました。

 ただ、法律や条例ができた当時と違い、ヘイトスピーチの主舞台は現在、SNSを軸としたネット空間に移っています。