憲法が認める「出生地主義」も見直し

 トランプ氏は昨年の大統領選の選挙戦で、移民対策を重要政策として掲げました。大統領候補のテレビ討論会では「不法移民がペットを食べている」と根拠のない噂をもとに移民の排斥を強調。大統領選に勝利すると、ことし1月の就任日に移民対策の大統領令を次々と発しました。

 メキシコとの国境地帯の非常事態宣言、難民受け入れプログラムの見直し……。そうした数々の移民対策の中に「外国のテロリストや国家安全保障及び治安への脅威から米国を守る」という政策があります。国の安全保障や治安の確保を理由に、ビザの発給を厳格にするよう関係省庁に指示したのです。

 その結果、6月にはアフガニスタンやミャンマー、イランなど12カ国を対象に、外交官など一部を除いて入国を禁止する大統領令を発布しました。これらの国々は、ビザ失効後も米国に滞在している人の割合の多さなどに基づいて決めたといいます。

 米国の半数近い州の連邦地裁は、この大統領の決定を違憲と判断して差し止める仮処分を相次いで出しましたが、最高裁はことし6月、連邦地裁の仮処分の適用範囲を制限する判断を示しています。司法機関の間でも判断が分かれているのです。トランプ政権は最高裁に、大統領令を支持するよう要求しています。

 就任初日の大統領令には「米国市民権の意味と価値を守る」というものもありました。

 合衆国憲法修正14条は「合衆国で生まれ、または帰化し、かつ合衆国の管轄に服する者は合衆国の市民である」と規定しています。トランプ氏はこの条文を独自に解釈し、不法滞在者の子どもは「管轄に服さない者」とみなして、市民権を与えないという大統領令を発したのです。

 市民権は米国人としての国籍と同義であり、永住権のある移民ビザ(グリーンカード)の取得者よりも強い権利が保証されます。永住権があっても市民権がなければ、原則、選挙で投票できません。

 米国では移民の子であっても、米国で生まれた人には市民権が与えられるという「出生地主義」を取り続けてきました。そもそも米国は移民がつくった国であり、移民に寛容な精神は建国以来のものです。トランプ氏はこの基本原則を覆す決定を下したわけで、外国人排除の姿勢は徹底していると言えるでしょう。

 韓国企業の労働者逮捕やビザ発給手数料高額化は、こうした移民対策の延長線上に位置づけられます。