OpenAI、オラクル、ソフトバンクの3社が進める「プロジェクト・スターゲート」のAIインフラ施設の建設現場(写真:ロイター/アフロ)
(小林 啓倫:経営コンサルタント)
2025年9月、OracleとOpenAIの間で、総額約3000億ドル(約45兆円)規模にのぼるクラウドサービス契約が締結されていたと報じられた。これはテクノロジー業界史上最大級の契約の一つとされており、AI分野におけるインフラ投資の新たな局面を象徴する出来事となっている。
今回の契約が両社にとってどのような意味を持ち、AI分野にどのような影響を与えるのかを整理してみたい。
OracleとOpenAIの契約
まずは今回明らかになった契約の内容と、それに対する市場の反応についてまとめてみよう。
前述の通り、これは総額で3000億ドルという超巨額の内容となっている。これはOpenAIからOracleに対して、クラウドサービスの利用料という形で支払われる。契約期間は2027年からの5年間。期間中、OpenAIは莫大なコンピューティング能力をOracleから調達することになる。
米ウォールストリートジャーナル紙によれば、契約の遂行には約4.5ギガワットものデータセンター電力が必要と見積もられ、その規模は米国の家庭約400万戸の消費電力に匹敵するという。まさに桁外れのスケールであり、同紙は本契約を「テクノロジー業界で過去最大級のクラウド契約の一つ」と位置付けている。
実はOracleは、OpenAIやソフトバンクなどと共同で、Stargate(スターゲート)と呼ばれるAIインフラ整備を進めている。今回の膨大なコンピューティング能力の提供も、米国内で複数建設される予定の大規模データセンターを通じて行われるとみられている(ちなみに、Stargate計画は2025年1月にホワイトハウスで発表された、総額5000億ドル規模の国家的AIインフラ投資プロジェクトの一部だ)。
このAI専用データセンターには、Nvidia製の最新GPUを搭載したマシンが大量に導入されるとみられており、OpenAIが進める最先端のAIモデルの開発・運用にとって大きな追い風となる。
この契約内容が報じられると、Oracleの株価は1日で36%以上(一時は45%)急騰し、過去最大の上げ幅を記録した(この急騰により、ラリー・エリソンCEOは一時的に世界一の富豪となっている)。いかにこのニュースが好感を持って受け取られたかを象徴していると言えるだろう。
また、この巨額契約はこれまでクラウド市場において、Amazon、Microsoft、Googleの「ビッグ3」に次ぐ存在であったオラクルをAIインフラの分野における主要プレーヤーに押し上げ、競争の構図を変える可能性があるとも指摘されている。
このように、Oracleにとっても大きなチャンスとなり得る今回の契約だが、少し過去を振り返ってその意味について考えてみよう。