AIエージェント時代には、皆の選択が画一的になる?(筆者がWhiskで生成)
(小林 啓倫:経営コンサルタント)
アルゴリズムが引き起こす渋滞
日本でカーナビが普及し始めたころ、各地で謎の渋滞が発生した。これまで交通量がごくわずかだった細い道に、突然多くのクルマが出現したのである。中には生活道路だったり、通学路だったりした道をクルマが行き交うようになったことで、交通事故のリスクが高まり、大きな問題になった場所もあった。
この怪現象の原因はもちろん、カーナビにあった。
カーナビを提供するメーカーが数社で、いずれも似たようなアルゴリズムで経路を検索していたために、ドライバーが最短距離を検索しようとしたり、渋滞が発生している道路を迂回させようとしたりした結果、似たようなルートを提案してしまい、地元民しか知らなかったような生活道路に大量のクルマが送り込まれてしまったのだ。
これは日本だけの問題ではない。2024年に発表されたある研究によれば、2010年から2023年にかけて報じられた、カーナビ(ナビアプリを含む)が原因で起きた交通問題に関する世界中のニュースを収集したところ、同様の渋滞問題が各地で発生していることが判明した。
大勢のドライバーが同じカーナビやナビアプリを使えば、全員が同じ「抜け道」に誘導されてしまうため、個人レベルでは「合理的」な選択でも、集団レベルでは問題になってしまうということだ。
カーナビの登場と普及から長い時間が経っていることもあり、この渋滞問題は広く認識され、さまざまな対策が講じられるようになっている。しかしいま、これと同じ構図の問題が、私たちの生活のあらゆる側面で起きようとしている。
その原因となるのが、これから生活のさまざまな場面で「ナビ」となるポテンシャルを持つ、AIエージェントである。