AIが法律知識に基づいて「訴訟のタネ」を発見する時代に(筆者がWhiskで生成)
(小林 啓倫:経営コンサルタント)
2025年春(4月~6月)に、TBS系「金曜ドラマ」枠で放送された、『イグナイト―法の無法者―』というドラマがある。公式サイトの解説を引用すると、
2000年以降の司法制度改革により、弁護士の数はこの20年で倍以上に急増し、飽和状態となっている。それによって、依頼人からの弁護士費用が主な収入源となる弁護士たちは、弁護士バッジをつけているだけでは食えない世の中になってしまった。そんな時代だからこそ、もしも弁護士が自ら“人々の間に訴訟を起こさせる”存在となってしまったら・・・。
という筋書きのドラマだ。そんな「悪徳」弁護士である主人公たちの合言葉は「争いは、起こせばいい」。文字通り、人々を焚き付けて訴訟を起こさせ、その弁護士費用を力ずくで生み出そうという姿勢だ。
もちろん、主人公たちの狙いはそれだけではないのだが、ストーリーがどう展開するかは実際にドラマを見ていただくとして(ちなみに、2025年春期ドラマの中でもかなり評価された作品の1つだ)、今回取り上げるのは、そんな悪徳弁護士たちを支援してくれるAIだ。
「訴訟になり得る論点」を把握するAI
いくら訴訟を「起こさせて」弁護士費用を稼ぐといっても、火のないところに煙は立たぬではないが、本当に何もないところから訴訟を生み出すのは大変だ。争いの種、つまり既に事件や事故が起きているが、まだ訴訟に至っていないという状況を把握する方が手っ取り早い。
前述のドラマ『イグナイト』の中でも、そんな争いの種を調べるシーンが登場する。その作業をするのは、主人公たち人間だ。
しかし最近のAI技術の進化を思えば、AIの方がより広範囲を、より深掘りした形で調査できるのではないか。そんな発想を現実のAI製品として具体化したのが、イスラエル企業のDarrowである。
Darrowが提供しているのは、いわゆるSaaS型のサービスだ。契約者にはクラウドを通じて、その名も「ジャスティス・インテリジェンス・プラットフォーム」というAIが提供される。料金はこのプラットフォームを利用するためのサブスクリプション(年額)に加えて、成功報酬が設定されている。
成功報酬はいったいどういうことか。それはサービスの根幹にかかわることなのだが、実はこのDarrow、「集団訴訟になり得る論点」を探してくれるAIなのである。