安田峰俊さんと舛友雄大さんの対談はYouTubeの新番組「安田峰俊:ディープアジア観測局」でご覧いただけます。ぜひ、チャンネル登録もお願いします!
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日本の難関中学受験塾SAPIXに子どもを通わせる中国人家庭や、東大に集まる優秀な中国人留学生、そして言論の自由を求めて脱出してきた中国人知識層――。近年、日本に渡った中国人が教育や学術の分野で存在感を強めつつあります。「潤日(ルンリィー)=中国から脱出する中国人)」と呼ばれる彼らの狙いや実態を、中国ルポライターの安田峰俊氏が、『潤日(ルンリィー):日本へ大脱出する中国人富裕層を追う』の著者で中国・東南アジアを専門に取材するジャーナリストの舛友雄大氏に聞きました。2回に分けてお届けします。

※JBpressのYouTube番組「安田峰俊のディープアジア観測局」での対談内容の一部を書き起こしたものです。詳細はYouTubeでご覧ください(収録日:2025年9月10日)

【前編】湾岸タワマンを買い漁る中国人、水源地や寺までも?爆買いの実態、詐欺マネーも還流か

「裏SAPIX」に見る中国の教育熱

安田峰俊氏(以下:敬称略):舛友さんは、 「潤日(ルンリィー)」の子どもたちが、都内の難関中学受験塾SAPIX(サピックス)で台頭しているという記事も書いていますが、反響は大きかったのでは。

舛友雄大氏(以下:敬称略):そうですね。中国人がSAPIXに子供を通わせ、先生の情報や成績の分析を共有するチャットグループ「裏SAPIX」に関する記事の反響が大きかったですね。ただ現在、「裏SAPIX」は、チャット履歴の流出などをきっかけに内輪揉めが起こり、休眠状態になっているという話も聞きました。

安田:とはいえ、別の形で似たような動きは続いているのではないでしょうか。中国版インスタとも呼ばれるSNSの「RED(小紅書/シャオホンシュー)」を見ると、中学受験関連の動画が多数投稿されています。中国本土の教育熱や競争意識がそのまま持ち込まれている印象を受けます。

舛友:過度な競争から逃げてきた潤日もいると思いますが、日本で周囲の中国人と交流する中で、何となく焦りを覚えて結局は教育熱が再燃するというケースも少なくありません。

在日中国人が日本で新たなエリート層を形成する日が来る?(写真:Visualistka/Shuttertstock.com)

安田:潤日が増えれば、その子どもたちの多くは日本の学校に通うことになります。SAPIXを経て難関私立中学に通うような中国人家庭の子どもたちだけではなく、日本のインターナショナルスクールに通う子どもたちも増えていますよね。こうした状況を、舛友さんはどのように見ていますか。