毎日新聞社(写真:アフロ)
(西田 亮介:日本大学危機管理学部教授、社会学者)
毎日新聞「総理退陣」報道の説明が腑に落ちない
本欄では、この間、読売新聞の「誤報」問題を取り上げてきた。
◎読売新聞「あってはならない重大な誤報」のおわびに欠けている意識、"1面で謝罪"でも通用しない現代の訂正の作法 【西田亮介の週刊時評】| JBpress
◎『石破首相、退陣へ』誤報疑惑に沈黙する毎日新聞、"首相が虚偽説明"と弁解する読売より信頼できるはずがない 【西田亮介の週刊時評】| JBpress
「結果的に誤報」を含めて誤報が続いた読売新聞社は、デジタル対応等に関して大きな課題を残すものの、強制捜査取り違えと石破総理退陣の双方について一定の説明を行った。
しかしながら、退陣記事公開からおよそ一週間が経過した本稿執筆時点(2025年9月11日夕方)において、読売新聞オンラインのトップは言うに及ばず、政治面にも当該記事へのリンクは掲載されておらず、読者が同サイトから記事を見出すことは極めて困難となっている。
これが現代における新聞社の説明責任履行と信頼回復に資するものと言えるであろうか。これが筆者の提起した問いである。
その後、毎日新聞社も後を追う形で、退陣記事掲載の経緯を「説明」する記事を公開した。本稿では同社の記事を検討する。
◎「首相、退陣へ」報道 説明します | 毎日新聞
まず記事公開の場所と分量だ。筆者の手元には9月8日の毎日新聞朝刊紙面がある。
1面中央に、囲みで「『首相、退陣へ』報道 説明します」という8行の囲み記事が配置されている。この囲み記事の内容は主として、「7月23日夕刊と24日朝刊で退陣を報じたこと」「読者から事実と異なるのではないかという声が寄せられたこと」「2面で説明すること」である。
同時に気づくことができるのは、「誤報という表現が用いられていないこと」「おわびや謝罪が行われていないこと」である。そして、「総理退陣」という、ある意味で記事が最も関心を集める時機まで留保していたのではないかという懸念を抱かざるを得ない。
2面には、「『首相、退陣へ』報道の経緯」という前掲デジタル版記事とほぼ同一の原稿が掲載されている。紙面における分量は、「総合」面中央に4段で、両サイドや下部にはその他記事や首相動静(「首相日々」)、広告も掲載されている通常紙面である。
デジタル版の記事と紙面記事の末尾には次のように記されている。
「当該報道をする時点で、首相本人が『政治空白』を懸念して報道を否定することは想定していました。しかし、記事のなかで説明しておらず、読者の皆様を混乱させる結果となってしまいました。
今回の報道への交流サイト(SNS)を含めた反響を教訓に、今後はより丁寧な報道を心がけてまいります」(2025年9月8日付毎日新聞朝刊2面より引用)
現時点でペイウォールの外にあるため、一読を勧めたい。何度か読み返したが、筆者には本記事の論理がまったく腑に落ちない。