さらに、2025年1月20日に発足した第2次トランプ政権は、TSMCに対し、総額1650億ドルを投じて米国内に8つの半導体工場を建設する計画の実行に加え、経営難に陥っている米インテルの再建支援まで命じる事態となっている。

 このように、TSMCは米国の要求に忠実に応じてきた。にもかかわらず、トランプ大統領は「台湾がアメリカの半導体事業を奪った」などと非難し、TSMC製の半導体に対して100%の関税を課すとまで脅している。

 しかし、TSMCにも我慢の限界がある。これ以上の無理難題を押し付けられるのであれば、「米国向けの半導体製造はやめ、今後は中国市場に注力する。米国内での工場建設も中止し、インテルの再建支援にも協力しない」と反旗を翻し、中国陣営へと軸足を移す──そんな展開も、まったく非現実的とは言えない。

 では、もしTSMCが実際にそのような選択をした場合、世界の半導体勢力図はどのように変化するのだろうか。以下では、テクノロジーノードが28nm以前の成熟プロセスと、16/14nm以降の先端プロセスという2つの領域に分け、地域別の製造能力を見ていく。

 なお、成熟プロセスと先端プロセスの境界を28~16/14nmとしたのは、28nmまではプレーナ型のトランジスタが使われ、16/14nm以降は3次元トランジスタFinFET等が使われるからである(図1)。

図1 トランジスタの形状と成熟プロセスおよび先端プロセスの関係
出所:Ellie Gabel、『「FinFETの終えん」に備える 今後10年でGAAへの移行が加速?』、EE Times Japan、2024年4月11日、(https://eetimes.itmedia.co.jp/ee/articles/2404/11/news101_2.html#l_mm230411_fin02.jpg、SourceはLamResearch)より引用
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