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米OpenAIが先日公開した最新の生成AI「GPT-5」は、博士号レベルの知能を持つ――。
そんな表現がメディアを賑わせています。
あらゆる質問に答え、論文を要約し、ビジネス戦略を瞬時に提案する。
確かにその姿は、人間の知能を凌駕したかのように見えます。
しかし、私は強調したいのです。GPT-5にも確かに死角があります。万能に思えるAIにこそ、思わぬ弱点が潜んでいます。
それを理解せずに「人間の時代は終わった」と叫ぶのは、あまりにも短絡的です。
実に賢く見えるAIですが、実は蜃気楼に過ぎない可能性だってあり得ます。遠目には完璧に見えても、近づけば欠点が見えてくるのです。
むしろその欠点を直視したとき、私たち人間の役割が改めて浮かび上がります。
第1章 正確さの死角
文字数も数えられない
AIの「賢さ」を示す例としてよく使われるのが「博士号レベルの試験合格」や「学術論文の執筆能力」です。
しかし、実際に原稿執筆の場面で試すと、驚くほど初歩的なところでつまずきます。
例えば「2000字で書いてください」と指示するとどうなるでしょうか。
AIはそれらしい分量の文章を出力しますが、実際には1800字前後に収まることが多いのです。
なぜなら、AIは文字単位で数えているのではなく、内部では「トークン」という言葉の断片単位を処理しているからです。
そのため「2000字」と言われても「おおよそこのくらいだろう」と推測するしかありません。
つまり、AIは長さを「だいたい」整えることはできても、正確に文字数を数えることはできないのです。
この事実は、AIがいかに「完璧な知能」に見えても、基本的な精度で欠落があることを物語っています。
しかも、特徴的なのは指定より長く出ることがほとんどない点です。
安全性のために「早めに打ち切る」設計がされているため、結果的に「2000字」と頼んでも1500〜1800字で終わります。
博士号レベルの知能を持つといわれる存在が、文字数という基本的な課題をクリアできない、このギャップこそ死角の象徴です。