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GPT-5時代、企業が生き残る条件

目次

　いま、企業経営は歴史的な分岐点に立っています。

　米OpenAIが先日発表した生成AIの最新版「GPT-5」の登場は、単なるITツールの進化にとどまらず、経営の意思決定や事業構造そのものを変えうる「知のインフラ革命」です。

　しかし、そのインパクトにもかかわらず、日本の会議室から聞こえてくるのは「効率化」「業務の自動化」という言葉ばかり。

　もちろん、効率化は即効性があり、導入効果も説明しやすい。

　しかし、それは競合が同じ道具を手にした瞬間に優位性を失い、やがて価格競争に巻き込まれる危うい道です。

　いま求められているのは、AIを単なる作業代行の道具としてではなく、「まだ誰も手をつけていない領域を共に創るパートナー」として活かす発想の転換です。

　本稿では、なぜ効率化から共創へのシフトが不可避なのか、そして経営者がこの変化を自らの成長戦略にどう組み込むべきかを、具体的な理由と実践法を交えて提言します。

効率化ブームの裏で進む停滞

　GPT-5の登場で、世界は再びAIの熱狂に包まれています。

　メディアでは「人間を超えた知性」といった見出しが踊り、各国の企業経営層もそのポテンシャルを口にし始めています。

　それほどまでに、今回の進化は単なるソフトウエアのバージョンアップではなく、社会構造そのものに影響を与えるレベルの出来事です。

　しかし、日本企業の会議室で聞こえてくるキーワードは、依然として「業務の能率化」です。例えば、

●膨大な資料や議事録の自動要約
●請求書処理や経理伝票入力の自動化
●カスタマーサポート業務を代行するチャットボットの導入

　こうした施策は短期的なROI（投資利益率）が説明しやすく、稟議も通りやすい。

　しかも、現場からも「助かる」という声が上がりやすいため、導入がスムーズに進みます。

　しかし、ここに危うさがあります。

　効率化は導入が容易な分、同質化も速い。競合も同じツールを同じように使えば、優位性は瞬く間に失われ、最後はコスト削減の消耗戦に陥ります。

　 そして価格競争は、例外なく利益率を圧迫します。

　効率化によって一時的にコストが下がっても、その分市場価格が下がれば、結局は収益の薄いビジネスに戻ってしまうのです。

　この構図は、過去にも繰り返し起きています。

　製造業での自動化競争、小売業でのPOSシステム普及、物流業での倉庫ロボット導入・・・。

　いずれも最初の導入者は恩恵を受けますが、技術が広まれば価格競争の波に巻き込まれます。

　AIの効率化利用も、同じ轍を踏む可能性が高いのです。