問題を抱えるドイツのメルツ首相(左)とフランスのマクロン大統領(右)(写真:ロイター/アフロ)
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(藤 和彦:経済産業研究所コンサルティング・フェロー)

 欧州最大の経済大国ドイツでメルツ政権が発足して8月13日で100日となった。

「強いドイツ」の復活を掲げ、大規模な減税や不法移民の送還、国防力の強化など矢継ぎ早に政策を打ち出したものの、メルツ氏の支持率は最新の世論調査で29%に落ち込んでいる(不支持は69%)。

 経済の不振が支持率の低さに大きく影響している。

 7日に発表されたドイツの6月の鉱工業生産は前月に比べて1.9%減少し、新型コロナウイルスが流行していた2020年5月以降で最低となった。7月30日に発表された第2四半期のGDP(速報値)は前期比0.1%の減少だったが、鉱工業生産が約1年ぶりの大幅な減少に見舞われたことで、マイナス幅は拡大するとの指摘が出ている。

 今年後半の経済成長が芳しくないことも確実だ。

 米国がドイツ製品に課す関税が7月末に15%になることが決まったからだ。

 最悪の事態(30%の関税)は避けられたが、ドイツの景況感は大きく後退した。欧州経済センターが12日に発表した8月の景気期待指数は34.7と、前月の52.7から大幅に低下した。独キール世界経済研究所は、米関税の影響でドイツのGDPは0.15%下がると試算しており、ドイツ経済が3年連続でマイナス成長となる可能性が高い。

 気がかりなのは、ドイツの国際競争力が低下していることだ。