話を聞く前はこれまでの非礼をこっぴどく叱られるのではないかと思っていたが、その印象はすっかり消え去っていた。自らを楽天的と自認する吉崎さんの告白はある意味、衝撃的であった。

「落ちてから気を失っていたこともあったけど、夜中じゅう人の声が聞こえていたので、大勢の方々が助かっていると私が救助されるときもそう信じていました。ヘリコプターで吊り上げられたんですが、私、そこでクルクルッと回ってしまったでしょう。あの時、ここで落ちてしまったら笑い者だな、なんてことを考えていたんです」

 吉崎さんの笑い声につられてついこちらも笑ってしまった。あんな修羅場で「落ちたら笑い者だ」などと思っていたとは……。相当、肝の据わった人だと心の中で舌を巻いた。

 吉崎さんは、もう飛行機に乗るのはこりごりと語っていたが、娘の美紀子さんは高校の修学旅行で九州に行く際、同級生と一緒に、事故後初めて飛行機に乗ったのだと明かしてくれた。

事故後、CAの仕事に復帰

 日航CAだった落合由美さんのその後はどうか。

 落合さんは事故後に日航のCAに復職したことがニュースになっていたが、その後、結婚して子供を授かった。筆者がふたたび取材に動いた当時は、日航を退職し、金融機関で働いていた。

 落合さんの住まいは、なんと伊丹空港を見渡せるような場所に建つマンションだった。本当に飛行機が好きなことが分かるような場所だった。

 電話で連絡を取ると、一度は会って取材をすることを快諾してもらったのだが、その後、職場の意向ということで流れてしまった。

 それでも、家庭を持ち、子どもを育て、幸せそうに暮らしている様子がうかがえ、取材する側としても温かい気持ちになった。