高校球児にとっての聖地・甲子園球場(写真:共同通信社)
「広陵高校の育成力」――7月に発売された野球専門誌の巻頭特集のタイトルだ。今となってはなんともタイミングの悪さが目立つが、2025年現在、NPB現役選手を14人も輩出する広陵高校の選手育成力は、確かなものがある。もちろんそこに暴力が伴っていなければ、の話だが……。
そんな名門校が夏の甲子園大会の途中で出場辞退という結果を招いてしまった。一野球ファンとして残念でならない。大会に出場し、一回戦を勝ち抜いている高校の途中出場辞退というのは極めて異例で、全国の高校野球ファンや関係者に与えたショックの大きさも計り知れない。
処分済みだったが止まない批判
広陵高校では、今年1月に野球部員による下級生への暴力を伴う不適切行為が発覚していた。同校はまず広島県高等学校野球連盟に事の次第を報告、さらに広島県高野連から日本高校野球連盟へ報告書があげられ、日本高野連はそれに基づいて審議、3月上旬に広陵高校への処分を決定した。
高野連が下したのは厳重注意処分と、暴力行為に関わった野球部員4名に対する1カ月間の対外試合出場停止処分だった。一方、被害を受けた生徒は野球部を退部、3月末に転校している。
高野連は厳重注意処分については、未成年者保護などの観点から公表しないことにしており、広陵高校が処分を受けた件は部外者には知られていなかった。そして広陵野球部は広島県予選に出場、順調に勝ち抜き、夏の甲子園への出場権を手にした。
だが、広陵が広島県予選を勝ち抜いてからおよそ半月後、1月に暴力事件があったことが世に知れ渡ることになった。被害者だった元部員の保護者とされるアカウントによってSNS上で“告発”され、これが瞬く間に拡散されたのだ。さらに被害生徒側は7月に警察に被害届を出していた。同校には「出場辞退」を迫る声が巻き起こった。
しかし高野連は、すでに解決済みの事案として、「主催者として大会の出場の判断に変更はない」と出場を認め、広陵もまた辞退しない意向を示した。
夏の甲子園大会で、不祥事による出場辞退といえば、2005年、高知県の明徳義塾高校の野球部員が下級生に暴行を働いたこと、さらに11人が喫煙していたことが判明し、大会開幕の2日前に出場辞退を申し出た事例がある。
また春のセンバツや地方大会を含めれば、暴力・暴行や飲酒・喫煙などの不祥事が発覚し出場辞退に至った高校は少なくない。