ノーベル賞授賞式後の晩餐会でスピーチする、物理学賞を受賞したジェフリー・ヒントン博士(2024年12月10日、写真:ロイター/アフロ)
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 前回稿で、思い付きを何でもSNSでころころ配信する米国のトランプ政権が、手のひら返しで仲間に見限られ、自ら墓穴を掘りつつある経緯をご紹介しました。

 どうしてこんなことになったのか、ネットワーク情報や学術情報、それらの「統制」の可否といった観点から深掘りしてみます。

  MetaからMAGAへ

「ファクトチェック」を放棄したグローバルSNS

 未成年者買春容疑で逮捕されその後自殺したジェフリー・エプスタイン元被告とのかかわりを疑われ、その「隠蔽疑惑」まで浮上した米国のドナルド・トランプ大統領。

 単にMAGA(Make Amereica Great Again=米国を再び偉大に)を掲げる政治グループのみならず、共和党にもひび割れを生じ始め、米国の政治日程に空白を生じさせつつあります。

 こうした事態を引き起こした要因として、最初に「大手SNSのファクトチェック撤廃」を挙げておきましょう。

 そもそもがトランプ氏自身も率先して「バラク・オバマ(元大統領)本人がディープステート(闇の政府)の指導者だ」的な「極端な見解」を発信し続けてきました。

 こうした問題外のデマに対して、さすがのオバマ氏もようやく見解を表明し始めており、SNSのみならず米国のメディア全般に対する第2期トランプ政権の介入が限度を超えつつあるとの認識が広がっています。

 単に米国内の案件のみにとどまらず、例えばトランプ氏のウクライナ戦争に関するフェイク情報の発信には第三者のファクトチェック団体が厳しい見解を公表しています。

 ところが、こうした「ファクトチェック」そのものが「偏っている」とトランプ氏(=政府)が率先して批判するという、憂慮すべき状況が現在進行形で進んでいます。

 残念ながら現在、SNSのグローバル大手には健全な「ファクトチェック」がほとんど機能していません。

 例えば、「ツイッター」はイーロン・マスク氏の買収=「X」化以降、ファクトチェックが有名無実になってしまいました。

 これについてはJBpressでも経営コンサルタントの小林啓倫氏の「マスク率いるxAIのGrokはファクトチェックの名に値しない、確証バイアスと最近性バイアスの組み合わせでポンコツに」 に解説が出ていますのご興味の方はぜひご一読ください。

 2025年初、トランプ氏の大統領の就任に合わせて、もう一つのSNSの雄、フェイスブックことMeta(メタ)も「ファクトチェック」を実質的にやめてしまう「政権への歩み寄り」を見せ、これでは「Meta」が「MAGA」になってしまう、という笑えないジョークがささやかれるようになりました。