人には言えないようなさまざまな秘密を抱える家族も存在する(写真:mapo/イメージマート)
#MeToo運動やジャニーズの性加害問題などをきっかけに、かつてはほとんど取り上げられることのなかったさまざまな性に関する問題やテーマにも光が当たるようになってきた。その1つが、家族内の性関係「近親性交」である。家族から無理やり性的な関係を強要されてきた人による告発なども相次いで報道されている。
家族の間に性関係が発生するとはどういうことか。『近親性交 語られざる家族の闇』(小学館新書)を上梓した阿部恭子氏に聞いた。(聞き手:長野光、ビデオジャーナリスト)
──阿部さんが、どのような活動をされているのか教えてください。また、今回なぜ「近親性交」というテーマで本をお書きになったのでしょうか?
阿部恭子氏(以下、阿部):私は2008年に、犯罪の加害者家族を対象にした支援団体「World Open Heart」を設立しました。重大事件などの場合、加害者の自宅に報道陣が押しかけてきます。その影響は加害者家族に及び、まるで加害者そのもののように迫害されます。
そうした報道陣の統制、弁護士などの各種専門家の紹介、裁判対応の助言、引っ越し・転居の助けなど、加害者家族の困りごとに応じた支援を提供しています。
加害者家族との関わりが長期化することもあるうえに、日本全国から依頼がくるので、遠方に一定期間滞在して対応することも多いです。時には、加害者家族の家に泊めてもらうこともあります。このような密なコミュニケーションを通して、家族間で何が起きてきたのか、さまざまな話を聞き取ります。
そうした中で、家族の中で性交が行われているという事実に出会うことがあります。家族間の性関係自体が、法律に触れるというわけではありませんが、当事者はどこか後ろめたい気持ちを抱えており、どうしたらいいものかと悩んでいる。そんな話がふとした会話の中でぽろっと出てくることがあるのです。
全国を回り、加害者家族支援を10年以上も続けてきましたから、そうした事例に出会ったことは一度や二度ではありません。近親性交のある家族に複数出会う中で、そうした家族には共通する部分があるように思えてきたので、問題提起の意味も含めてこの本を書きました。
こうしたテーマは書き方や出版する時期を間違えると正しく議論されないと思い、いつどのような形で出すべきかとずっと考えてきました。
その中で2023年にジャニーズ事務所の性加害問題が明らかになり、広く性加害というものに注目が集まりました。今であればそういうことを話し合える素地ができているのではないかと考え、当事者たちが傷つかないように細心の注意を払いながら書いて、今回本を出しました。
──犯罪加害者の家族が社会的に孤立することが、近親性交を生む1つの要因かもしれない、と本書を読みながら感じました。
